本研究では、19世紀中葉のアメリカの家事指南本をはじめとする活字媒体において「家庭性(domesticity)」の概念がどのように表象されているのかについて検討を行った。具体的にはリディア・マリア・チャイルドの『アメリカのつましい主婦』とキャサリン・ビーチャーの『家政学論』、さらに、ハーマン・メルヴィルの「私と私の煙突」および「林檎材のテーブル」で提示される主婦像の分析を行い、女性による家事指南本も、男性による小説も、家庭を女の領域とする同時代のジェンダー観に従った主婦像を提示しているようでありながら、そこからの逸脱もうかがえるということを明らかにした。
|