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2022 年度 実績報告書

亡霊のアイルランドを描くジョイス―「悪夢」の歴史としてのディアスポラ

研究課題

研究課題/領域番号 19K13112
研究機関東洋学園大学

研究代表者

小林 広直  東洋学園大学, グローバル・コミュニケーション学部, 准教授 (60757194)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードジェイムズ・ジョイス / James Joyce / アイルランド / 憑在論 / ディアスポラ / トラウマ / モダニズム / ジャック・デリダ
研究実績の概要

本研究では、大英帝国とカトリック教会によって二重に支配されたアイルランド、ダブリンを舞台にしたジェイムズ・ジョイスの複数の作品に見られる様々な亡霊表象を考察した。その結果、それらの〈亡霊〉には、アイルランドの「悪夢としての歴史」が書き込まれており、その亡霊と対峙する各作品の主人公たちの抵抗には、作者の伝記的要素が多分に含まれているため、トラウマ的経験の克服しようとする個人史の試みは、アイルランド人たちが支配者に対して抵抗を試みる現在進行形の国史としてアナロジカルに解釈できることが明らかになった。特に2022年に出版百周年を迎えた『ユリシーズ』(1922)には、カトリック・アイリッシュのスティーヴンとユダヤ系アイリッシュのブルームがそれぞれ排外主義的なナショナリズムに陥ることの危険を回避する様子が描かれており、共に民族離散(ディアスポラ)を経験したアイルランドとユダヤの歴史が重ねられつつ、差異化されることで、来るべき国家としてのアイルランドの行き先をジョイスは暗示している、ということを分析した。
とりわけ22年度は、『ユリシーズ』100周年を記念するイベントとして、2月2日より「22Ulysses―ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』への招待」という全22回のオンラインイベントの発起人の一人として、運営に携わった。日本ジェイムズ・ジョイス協会の研究者を中心に各挿話についての講演を行ってもらい、私自身も第1回、第2回、第6回、第21回、第22回に登壇した。このイベントを通じ、広く一般読者に『ユリシーズ』の魅力を伝えることに尽力したが(各回平均して150名以上の参加者があった)、これは研究成果を国民に還元するアウトリーチ活動のひとつとして一定の貢献ができたと考えられる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] How James Joyce Recycles Popular Culture: References and Nods to Thomas Moore in "An Encounter" and "The Dead."2022

    • 著者名/発表者名
      Hironao Kobayashi
    • 雑誌名

      東洋学園大学紀要

      巻: 27 ページ: 37-49

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 亡霊が亡霊に出会うこと――ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』第15挿話「キルケ」再訪2022

    • 著者名/発表者名
      小林広直
    • 学会等名
      日本英文学会関東支部第22回(2022年度秋季大会)シンポジウム1「亡霊文学を見つめ直す」
  • [学会発表] エゴイストは歴史を学ぶ事ができるか?―『ユリシーズ』におけるパトリオティズム2022

    • 著者名/発表者名
      小林広直
    • 学会等名
      日本ジェイムズ・ジョイス協会第34回研究大会
  • [図書] ジョイスの挑戦2022

    • 著者名/発表者名
      金井嘉彦、吉川 信、横内一雄、新井 智也・岩下 いずみ・河原 真也・小林 広直・田多良 俊樹・田中 恵理・戸田 勉・平繁 佳織・ 南谷 奉良・桃尾 美佳・山田 久美子・湯田 かよこ
    • 総ページ数
      352
    • 出版者
      言叢社
    • ISBN
      978-4-86209-086-7
  • [備考] 22Ulysses―ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』への招待

    • URL

      https://www.joyce-society-japan.com/22ulysses/

  • [備考] Stephens Workshop

    • URL

      https://www.stephens-workshop.com/

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公開日: 2023-12-25  

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