本研究が亡霊(的)という言葉で明らかにした特性は、誰もが歴史の中に生きており、その時代、あるいはその地域特有のイデオロギーの影響を受ける以上、その死には政治的な歴史性が付きまとい、その死の意味を考えることは後世に生きる者の責務であるという倫理的応答可能性の問題である。この歴史という亡霊は、アイルランドに限らず、どの国にも当てはまる現象だ(例えば、本国においては第二次世界大戦における加害性と被害性の両面の問題として)。その意味で、本研究はアイルランド文学や英文学に限定されることなく、学際的な意義、そして現在を生きる私たち一人ひとりにとっても社会的な意義を持つと思われる。
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