研究課題/領域番号 |
19K13132
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
小久保 真理江 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (00815277)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イタリア / アメリカ / 文化 / 文学 / 20世紀 |
研究実績の概要 |
今年度は世代の異なる三人の作家、チェーザレ・パヴェーゼ、イタロ・カルヴィーノ、ウンベルト・エーコに焦点を当て研究を進めた。上記三人の作家はそれぞれにアメリカ文化に強い関心を寄せ、アメリカ文化から少なからぬ影響を受けている。カルヴィーノとエーコは主に20世紀後半に活躍した作家ではあるが、20世紀前半のイタリアにおけるアメリカのイメージについて評論や小説で扱っているため分析の対象とした。 具体的には各作家の評論・書簡・小説・インタビュー記録などを分析し、そこから浮かび上がるアメリカ及びアメリカ文化のイメージについて比較・考察した。それにより、三人のアメリカに関する言説・表象には、属する世代の違いや作家・知識人としてのそれぞれの特質が反映されていることを明らかにした。また、同じ一人の作家のなかにおいても、アメリカへの眼差しには、時代による変化があり、その変化が歴史的・政治的背景と結びついていることも明らかにした。 12月には東京外国語大学総合文化研究所にローマ・ラ・サピエンツァ大学准教授のラウラ・ディ・ニコラ氏を招き、イタリア語による講演会「L’America raccontata dagli scrittori italiani(イタリアの作家たちが語ったアメリカ)」を開催した。この講演会では、ディ・ニコラ氏に口頭発表を行っていただいたほか、自らも当該テーマの研究成果を口頭で発表した。さらに、2020年2月には、上記の口頭発表を基盤に執筆した論文を機関紙『総合文化研究』に発表した。日本ではイタリアの作家とアメリカ文化との関係については一般的にわずかにしか知られておらず、研究もほとんどなされていない。その意味で、上記の講演会や口頭発表・論文は、日本におけるイタリア研究や比較文学・文化研究に新たな視座をもたらす意義があったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料調査、先行研究の整理、複数の作家の評論・小説・書簡・インタビュー記録の分析を行い、その成果を口頭発表と論文の形で発表できたため、概ね順調に進展していると言える。また、カルヴィーノ・ラボラトリー(Laboratorio Calvino)の運営責任者でもあるラウラ・ディ・ニコラ氏(ローマ・ラ・サピエンツァ大学准教授)を一時滞在先の京都から招いて講演会を開催できたことも非常に有意義であった。ディ・ニコラ氏とは講演会の翌日にも再び意見交換を行い、その際に今後の研究のための貴重な助言や情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はパヴェーゼやカルヴィーノに加え、他のイタリア人作家によるアメリカをめぐる言説と表象についても調査・分析を進め比較・考察する。イタリア人作家・知識人・芸術家によるアメリカ滞在記も分析の対象に含める。また、20世紀前半のイタリア映画作品におけるアメリカの表象に関する分析を行う。20世紀前半の文化史、特に未来派や、ファシズム政権下の文化、イタリアのモダニズムとネオレアリズモに関する最新の研究動向の把握・整理にも努める。現在はCOVID-19の問題により国外での資料調査を実施することが難しい状況ではあるが、今後、状況が落ち着けば、イタリアやアメリカでの資料調査を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19のためイタリアから年度内に購入できなかった書籍があり、8735円が余った。次年度にはこの金額を書籍購入に充てる予定である。
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