研究課題/領域番号 |
19K13134
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
松下 隆志 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (70836056)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロシア / 文学 / ポストモダニズム / ソ連 / 映画 |
研究実績の概要 |
本研究は、現代ロシア文化におけるナショナル・アイデンティティの表象を、文学、映画、アート、ポップカルチャーなど、幅広い視点から多角的に分析することを目的としている。本年度は、昨年度からの研究課題を継続して行うとともに、現代ロシア文化に大きな影響を与えているソ連時代の全体主義に関する研究および翻訳、新型コロナウイルスのパンデミックが文学プロセスに与える影響などについても分析を行った。 具体的な研究成果は以下の通りである。 (1)現代のサンクトペテルブルグを代表する作家パーヴェル・クルサーノフの諸作品、および現代ペテルブルグ文化に関する文献の読解を行った。(2)現代ロシア文学のプロセスにおける自由の問題を分析し、雑誌"Japanese Slavic East European Studies"に論文を発表した。(3)セルゲイ・ロズニツァ監督『国葬』、イリヤ・フルジャノフスキー監督『DAU.ナターシャ』などの映画を対象に、現代におけるソ連全体主義の表象を分析した。『DAU.ナターシャ』に関しては日本語字幕の監修を担当し、同映画のパンフレットに映画を分析した記事を寄稿した。(4)現代ロシアを代表するポストモダン作家ウラジーミル・ソローキンの『マナラガ』を「文学の死」という観点から考察し、電子雑誌『ゲンロンβ』に論考を執筆した。(5)同じく全体主義のテーマを扱っており、現代ロシアにおけるソ連ノスタルジーの問題を考える上で重要な作品であるソローキンのソ連時代の長編『マリーナの三十番目の恋』を河出書房新社から翻訳出版し、作品解説を執筆した。(6)新型コロナウイルスのパンデミックが文学プロセスにいかなる影響を与えるかという観点から2020年のロシア文学を分析し、『図書新聞』に論考を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロシアなど国外で現地調査を行う予定だったが、コロナ禍で海外渡航が事実上不可能となり、計画を断念せざるを得なかった。一方で、現代ロシアの文学や映画作品に関する分析を行い、論文や翻訳出版などの成果を出すことができたため、全体としては順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の世界情勢を考慮すると、今後も外国での現地調査を行うことは極めて難しいと考えられる。そのため、今後は国内の大学での資料調査やインターネットでの資料調達などを中心に研究を進めていく。また、当研究に関して学会のパネル・ディスカッションなどを組織できないか、関連する領域の研究者らと連携しながら可能性を探っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により予定していた国外での現地調査を実施することができなかったため。
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