研究課題/領域番号 |
19K13134
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
松下 隆志 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (70836056)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ロシア / 現代文学 / ポストモダニズム / ナショナリズム / ポップカルチャー / ヒップホップ |
研究実績の概要 |
本研究は、現代ロシア文化におけるナショナル・アイデンティティの表象を、文学、映画、アート、ポップカルチャーなど、幅広い視点から多角的に分析する ことを目的としている。本年度は、昨年度からの研究課題を継続して行うとともに、本年度はおもにポップカルチャーに関する研究や文学作品の翻訳を行った。 具体的な研究成果は以下の通りである。 (1)ウラジーミル・ソローキン『吹雪』(河出書房新社)の翻訳出版および解説の執筆を行った。本作品は近未来の帝国化したロシアを主題としており、とりわけ2010年代以降のプーチン政権下の社会の保守化を考える上で重要である。また、これと関連して、6月に紀伊國屋書店新宿本店で行われた文学イベントで講演を行った。 (2)ユーリー・マムレーエフ『穴持たずども』(白水社)の翻訳出版および解説の執筆を行った。マムレーエフは後期ソ連モスクワにおける非公式文学の創始者の一人で、本研究の主題であるポストソ連ロシアのナショナル・アイデンティティの形成を考える上でも重要な作家であり、『穴持たずども』はその代表作となる。 (3)ロシア・ヒップホップの研究。2010年代のロシアで若者に人気の音楽ジャンルとなったヒップホップは、反体制文化としても機能した。本研究では、とくに2022年2月のウクライナ侵攻後にロシアのラッパーたちが発表した楽曲の分析を通して、彼らの戦争に対する向き合い方を考察した。本研究の成果は音楽誌『AGI』に掲載された。 (4)2023年のロシア文学の動向を概観した記事を『図書新聞』に寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウクライナ侵攻の影響でロシアでの現地調査はできなかったが、ロシアのポップカルチャーに関する論考を発表したほか、本研究にとって重要な文学作品の翻訳出版もできたため、全体としては順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシアへの渡航は難しいと考えられる。国内の大学図書館あるいはロシア以外の外国で現地調査を行うことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算の大部分をロシア作家の日本への招聘に支出することを計画していたが、先方の都合で不調に終わったため。
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