研究課題/領域番号 |
19K13150
|
研究機関 | 日本社会事業大学 |
研究代表者 |
大野 ロベルト 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 講師 (80728915)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 紀貫之 / 土佐日記 / フロラ・ベスト・ハリス / 翻訳 |
研究実績の概要 |
令和元年度には『土佐日記』を初めて英訳したフロラ・ベスト・ハリスの業績を調査し、これまで充分に明らかになっていなかった書誌を特定することができた。とくに、1881年、1910年という2度の出版以前に、新聞紙上に連載された英訳があったことは、先行研究では推測の域を出ていなかったが、今年度の研究の過程で紙名および連載の日付を明らかにし、さらに紙面のコピーも入手することができた。 以上のような作業と並行して、翻訳本文の分析も進めた。和歌のように解釈の自由度が高いテクストの翻訳などに注目したことはもちろんだが、ほかにも「もののあはれ」のような抽象的な概念がどのように翻訳されたのかに目を向けることで、当時の外国人による日本文化への理解のあり方を探ると共に、そもそも日本人は同じ概念をどのように捉えていたのか、という点についても問い直すきっかけとなった。 上記の研究成果については、研究期間の開始時点で校正段階にあった単著にも、断片的にではあれ、盛り込むことができた。その後、新たに学会での報告1本、国際学会での報告2本、招待講演2本でも発表を重ね、質疑応答などを通して研究の今後の進め方についても示唆を得ることができたが、論文の形による発表は翌年度に持ち越しとなった。執筆段階で上述の新資料の存在が明らかになったため、当初の「既存の土佐日記の英訳を網羅する」という研究目的の完遂のためにも、それを踏まえたうえで論文を完成させるべきと判断したからである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
翻訳者ハリスについて当初の予想よりも多くの資料を発見することができた。その分析に注力したため、他の翻訳者による『土佐日記』の分析については充分に進捗していないが、業績の意義を含む、研究の総体的な進展という点では、計画にもとるものではない。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度については、論文の形での成果発表を行うと共に、ハリス以外の翻訳者による『土佐日記』英訳の分析を可及的速やかに進めるつもりである。本来であれば今年度についても学会報告を積極的に行うべきだが、これについては今般の情勢に鑑みて、来年度の実施となる可能性がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の初期段階であり既存の資料の分析に注力したため、新資料の収集にかかる物品費や調査にかかる旅費の支出が抑制された。令和2年度については調査や成果発表のための複数回の出張の計画があるため、上記にかかわる支出が増加することが見込まれる。
|