日本国内には中世ヴァルド派写本の文献学的研究が行われた例はなく、本研究による教理詩の解読・分析や日本語翻訳は、全て本邦初の成果である。中世ヴァルド派の文書は彼らの信条や精神的価値観を理解する上で貴重な史料ながら、中世の言語で書かれていて可読者が少ないため、詳細な分析と翻訳は教会史や聖書研究に重要な貢献をなすものである。また、本研究が8本の教理詩を包括的に分析した点は、世界的に見ても稀有な取り組みであり、「詩」を通して中世ヴァルド派の教理を解き明かそうとする試みは、ヴァルド派ひいてはキリスト教研究全体の発展に寄与するものである。これらの点に本研究成果の学術的意義や社会的意義があるといえよう。
|