研究課題/領域番号 |
19K13168
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
新井 保裕 東洋大学, 国際教育センター, 助教 (10718422)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 朝鮮族 / 社会化 / 週末学校 / 言語使用・意識 / 言語・民族教育環境 / 上海市 |
研究実績の概要 |
本研究課題は中国延吉市、大連市、上海市の朝鮮族を対象にコミュニケーション行動を調査研究するものであるが、三地域で比較調査を行うに当たり、共通となる調査基準をたてる必要がある。そこで本年度は、他二地域に比べて朝鮮族のコミュニティが限定的である上海市に焦点を当て、三地域共通で実施できる調査を設計するため、上海市で予備調査を行った。具体的には2019年9月に1週間上海市に滞在し、現地研究協力者と共に、華東朝鮮族週末学校(上海市を中心に、江蘇省、浙江省を網羅)を見学し、上海市在住朝鮮族の言語・民族教育環境について調査した。その結果は、同年12月に第23回東京移民言語フォーラムで口頭発表を行い、コミュニケーション行動形成の土台となり得る言語・民族教育環境が上海市在住朝鮮族ではどのように提供されているか、その特徴を概観した。なお上海市における子女への朝鮮語教育を包括的に把握するために、上海韓国学校でもヒアリングを実施し、朝鮮族週末学校との比較も試みている。共に調査協力学校の担当者ともコミュニケーションをとり、協力を依頼している。 また本研究ではコミュニケーション行動の調査記述だけでなく、その背景を探り理論化も検討している。朝鮮族の言語使用・意識の多様性(地域差、性別差)を「社会化」という理論的枠組みで説明を行えるのではないかと考え、本研究課題代表者が以前共同研究で関わった調査データの再分析を行った。その結果は2019年9月に『社会言語科学』22巻1号、2020年3月に『アジア・アフリカの言語・言語学』14号で共著論文(筆頭)で論文発表した。朝鮮族の言語使用・意識の多様性を理論・記述の両面から分析しており、今後コミュニケーション行動全般へと拡大していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では2019年8月から9月にかけて三地域で予備調査を実施する予定であったが、これまで研究がほぼ成されていない上海市在住朝鮮族の言語使用・意識やコミュニケーション行動の形成環境を把握することが最優先と考えたため、上海市のみで調査を行った。 一方で延吉市や大連市での調査については、中国の現地研究者とオンライン・オフラインで打ち合わせを実施し、三地域で実施するアンケート調査票の作成を行った。またインタビュー調査についても調査形式を検討している。 しかし2019年度末より中国で新型コロナウィルス感染症が拡大し、中国での調査を2020年3月に実施するのが難しい状況となり、次年度以降に延期した。現在、調査対象は朝鮮族学校や朝鮮族週末学校を検討しているが、社会情勢の変化により再検討を迫られることも考えられる。状況の変化に対応できるように準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度以降は延吉市・上海市・大連市で朝鮮族のコミュニケーション行動に関するアンケート調査、インタビュー調査を実施する予定である。現在は2020年8月以降に、現地に赴き現地研究協力者と共に対面で調査を実施する予定であるが、昨今の社会情勢によっては非対面での調査実施を余儀なくされる場合もあり、オンライン調査の実施可否についても検討を重ねていく。当初の計画通り、2022年度9月までに三地域での本調査を終え、2022年度末までに研究結果の整理及び成果発表の国際シンポジウムを開催する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響のため、2020年3月に予定していた中国上海市での調査や国内の学会が中止・延期となったため、次年度使用額が生じている。2019年度に実施できなかった調査は、社会情勢も考慮に入れながら、2020年度に調査を行い、その調査費用に研究費を充てる。
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