本研究は、「初期荘園」として把握されてきた8世紀中期~9世紀の荘園について、大化以前の大土地所有や、平安後期の荘園との関係も含めてとらえ直す意義を有しており、日本列島の歴史の中でも重要な要素である大土地所有の歴史的展開を把握するための基盤となりうる研究である。また、本研究で得られた知見と他地域のあり方を比較検討することによって、関連する学問分野の発展にも寄与しうる。さらに本研究は、古代の地域の歴史的環境の復原によって地域の歴史資産を見直す契機ともなり得るものであり、研究の過程で明らかとなった前近代日本の土地と人の関わりを通じて現代における環境問題を再考する一助となることも期待できる。
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