研究課題/領域番号 |
19K13385
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石田 真衣 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (90839375)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヘレニズム / プトレマイオス朝 / エジプト / 書簡 / パピルス / 碑文 |
研究実績の概要 |
本年度は、ヘレニズム期のエジプトにおける社会規範の形成過程を明らかにするための事例研究として、私的組合の活動に着目し、各コミュニティの組織的な特徴と紛争処理の実態面について考察してきた。具体的な研究活動は以下のとおりである。 (1)ヘレニズム期からローマ期にかけてのパピルス文書史料(書簡、嘆願書、規約)と碑文史料(顕彰碑文、奉納碑文、規約)を収集した。 (2)上記の史料群をもとに、私的組合の構成員(信徒団、軍人集団、職業組合、出自、女性)、活動の記録(会合、奉納)を分析し、地域的特徴と時代的変化について検討した。 (3)組合内部での紛争処理に関する断片史料を抽出し、その実態について総合的に考察した。 以上から、私的組合と地方神殿との強い結びつきと聖域空間の社会的役割が明らかとなった。これらをより実証的に論じるために、碑文史料の詳細な調査が必要であるが、COVID-19の影響により、現地調査がかなわず、計画の一部は延期せざるを得なかった。以上の成果の一部は、古代史研究会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は本研究の最終段階として、エジプト内陸部の各村落コミュニティ、神殿コミュニティ、私的組合における紛争処理の事例研究をもとに、ヘレニズム期エジプトにおける社会規範の形成とその変容過程についてまとめる予定であったが、COVID-19の影響により、予定していた研究機関での調査や現地調査の一部が遂行できず、研究の完成に至らなったので、期間延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
現状では、COVID-19の影響によって、先が見通せないが、可能なかぎり、史料の収集と分析をすすめる。 (1)ヘレニズム期からローマ期にかけての私的組合に関するパピルス書簡・碑文史料を収集し、データベースを作成する。 (2)書簡と碑文の史料的相互影響について考察する。 (3)紛争処理の観点から、地域コミュニティにおいて書簡が果たした役割について検討する。 (4)現地調査が可能となれば、エジプト南部を中心に神殿遺跡の碑文調査をおこない、本研究の完成を目指す。私的組合の活動と地方神殿の関係をより広範囲に分析し、成果報告を継続しておこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響によって、予定していた海外調査をおこなうことができなかった。その結果、特定の地域と神殿遺跡を対象とする実地調査ができなかったために、使用残額が生じた。 次年度使用額については、海外調査が可能となった場合には、当初の計画通り旅費に充当する。困難な場合は、国内外から史料と文献を入手する費用に充当する。
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