研究課題/領域番号 |
19K13400
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
市川 彰 名古屋大学, 高等研究院(文), 特任助教 (90721564)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 都市 / 建築技術 / メソアメリカ / マヤ / 日干しレンガ / エルサルバドル / サン・アンドレス遺跡 / オープンサイエンス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、古代メソアメリカ文明に特徴的な土製公共建築を考察対象として、その建築技術を微細に検討することにより、この地における都市文明の創造過程を新たな観点から明らかにすることである。2019年度は、これまで代表者が実施的してきたマヤ南東地域サポティタン盆地(現在のエルサルバドル共和国中央部)に位置するサン・アンドレス遺跡の発掘調査で出土した建築材である日干しレンガと泥漆喰の分析をおこなった。また、サン・アンドレス遺跡近隣でおこなわれていた行政発掘調査にも立ち会うことができ、有益な情報を獲得することができた。 建築材の分析の主な結果は次のとおりである。1)先スペイン期の日干しレンガは木製の鋳型で製作されていた可能性が高いこと、2)先スペイン期の日干しレンガには、明瞭な規格性は存在せず、さまざまな大きさが存在していたこと、3)泥漆喰用の混ぜ土は、粒径が10mm前後の黒色火山礫が約60%、土が約40%でできていること、4)泥漆喰のメンテナンスのために、何層にも塗布されていること、が明らかとなった。行政発掘調査の立ち合いでは、サン・アンドレス遺跡の周辺の集落遺跡では、日干しレンガや泥漆喰片がほぼ発見されないことがわかった。このことは、日干しレンガや泥漆喰の技術は、盆地内の公共建造物や支配層の住居といった非常に限定されて使われていた可能性を示唆している。 これまでの研究成果の一部をまとめ、Society for American ArchaeologyやEarth USA 2019で口頭発表およびポスター発表、南山大学人類学研究所研究論集などで論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2019年度は、次年度以降の建築材の分析に関わる基礎データを取得し、重要な所見が得られたため。また、メキシコ中央高原トラランカレカ遺跡やオアハカ州リオ・ビエホ遺跡の見学も実現し、調査団長らと意見交換できたことは非常に有益であったため。
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今後の研究の推進方策 |
建築材の理化学分析とサン・アンドレス遺跡の追加調査の実施を予定しているが、現地政府の改組などもあり調査や分析許可申請の難航が予想される。また、新型ウィルスの影響もあり国外調査の予定が立ちにくい状況にある。対応策としては、2019年度に見学をしたメキシコの遺跡調査に参加し、新しい比較データを獲得することが挙げられる。国外調査が難航する場合には、研究者らとメールなどで意見交換しながら、これまで獲得したデータを精査するとともに、国内外の学術誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大にともなう、当初予定していた研究打ち合わせのための出張を取りやめたため。研究打ち合わせのための出張を翌年度に再計画し、使用する予定である。
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