研究課題/領域番号 |
19K13401
|
研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
稲田 宇大 (金宇大) 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (20748058)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 金工品 / 装飾付大刀 / 製作技術 / 工人移動 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、国内を中心とした資料調査を実施しつつ、韓国での2度の調査を実施した。 国内では、外来系とされる装飾付大刀の中でも、比較的類例の少ない、マイナーな種類の大刀を中心に資料調査を進めた。特にこの年度を通して精力的におこなったのが、装飾付三葉環頭大刀を対象とする調査・検討である。三葉環頭大刀は、古くは弥生時代から出土例が知られるが、古墳時代の中期以降になると、朝鮮半島の各地との関係の中で系譜を理解できる事例が中心となる。しかし、国内での出土例が十分でないため、それが舶載品か否かという点も含め、具体的な系譜の評価が難しい。そこで、実際に朝鮮半島のどの地域との関わりで解釈されるものかを探るため、主に柄部装飾の製作技術の比較検討を進めた。韓国でも、比較的近年出土した羅州丁村古墳の銀装母子大刀をはじめ、関連資料の実見調査を実施し、国内出土資料との比較検討を重ねた。これらの調査成果は、次年度に文章化し公表する予定である。 具体的な成果としては、韓国の忠清南道歴史文化研究院の要請をうけ、古墳時代における倭と百済の交流を日韓両国出土の金工品から考える論考を執筆し、装飾付大刀を製作する百済や加耶の工人がいかにして日本列島へと技術を伝えたかを再論した。その他、本研究に関連する口頭発表や講演を多数おこなった。 また、本研究に派生する研究として、贋作の可能性がある環頭大刀資料の一群を抽出し、その真作性について検討する論考を執筆した。上記の資料群には学史上知られた資料が含まれており、当該分野の今後の研究に資する分析となるはずである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度より現在の職場に移ったため、初年度の授業準備などで研究に費やせる時間を十分に捻出するのが難しく、調査研究の実施が困難な状況が多かった。そのため、当初予定していた獅噛環頭大刀の悉皆調査を実行できなかったことに加え、成果を公表するはずであった三累環頭大刀の研究についても文章化を果たせずにいる。一方で、口頭発表や講演を例年より多くおこなうなど、研究成果のアウトプットはある程度こなしている。また、可能な範囲での資料調査を継続する中で、いくつか重要資料の実見観察を実施し、新たな研究視点も見つかってきている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに実施してきた調査成果をまとめ、順次公表していく。依然公表できずにいる三累環頭大刀に関する研究をはじめ、前年度に資料調査を進めてきた三葉環頭大刀についても成果を文章化する。加えて、東京国立博物館などが所蔵する個別重要資料の検討・紹介を軸とした論考執筆も予定しており、年度中の発表を目指す。 一方で、前年度におこなう予定であった獅噛環頭大刀の資料調査をはじめ、単龍・単鳳環頭大刀や双龍環頭大刀の資料調査を並行して進めていく予定である。特に獅噛環頭大刀については、実見調査が可能な日本列島出土資料の全点を年度中に調査・観察することを目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新しい職場への赴任初年度で、授業準備などで研究の時間を十分に確保することができなかったため。次年度で、物品の購入と調査旅費を中心に使用する予定である。
|