研究課題/領域番号 |
19K13401
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
稲田 宇大 (金宇大) 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (20748058)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 考古学 / 古墳時代 / 朝鮮三国時代 / 装飾付大刀 / 対外交渉 / 製作技術 |
研究実績の概要 |
3年目となる2021年度も、2019年度末から続いているコロナ禍のため、調査を十分に実施できない状況が続いた。韓国での資料調査実施は年度が終わった今でも再開の目処すら立っておらず、国内での調査も大学の長期休暇に感染拡大の波が重なったことで予定していた通りに調査を遂行することが叶わなかった。それでも、感染状況が比較的収まっている期間に可能な限りの資料調査を実施した。 そうした状況であったため、2021年度は論文の執筆に力を入れた。最大の成果は、2019年度以来、発表が遅れていた三累環頭大刀研究の論文化・公表を完了したことである。論文投稿に際しては、追加調査をおこない、国内で実見可能な三累環頭大刀を全点確認している。また、舶載品と目される鉄製象嵌装単鳳環頭大刀を含む東京国立博物館所蔵埼玉県稲荷塚古墳出土品の調査研究論文、兵庫県本位田古墳群出土の単龍環頭大刀柄頭の資料紹介・考察と、未報告資料の検討・紹介論文の執筆に従事した。 このほか、1件の講演、1件の研究報告を古墳時代の装飾付大刀研究に関連しておこなった。さらに、外来系の装飾付大刀の源流となる、古墳時代中期前半以前の装飾のない鉄製環頭大刀の検討を開始、資料の実見や検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の研究実施状況報告においても述べたが、本研究の主眼である分析対象資料の実見観察調査を、コロナ禍のため十分に遂行できない状況が継続している。そのため、研究計画は予定通りに進展しているとは言えない。 一方で、国内の資料の検討は、可能な限りにおいて実施しており、個別資料の紹介報告をコンスタントに発表している。また、三葉環頭大刀、三累環頭大刀といった器種別の論考を発表する中で、その他の器種、獅噛環頭大刀や単龍・単鳳環頭大刀、双龍環頭大刀などについても、研究の見通しが開けつつある。さらに2021年度は、古墳時代後期の装飾付環頭大刀の源流となる中期前半以前の鉄製環頭大刀の検討にも着手した。外来系装飾付大刀の性格と、そこに反映された当時の社会体制の一端を解明する試みは、一定の進展が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は本科研の最終年度にあたるが、次の三つの小テーマを主題に調査・研究を継続する。 第一に、単龍・単鳳環頭大刀の編年体系の再構築である。単龍・単鳳環頭大刀の検討はこれまでにも継続しており、資料調査もコンスタントにおこなってきた。しかし、個別の未報告資料の紹介や、特徴的なまとまりをもった資料群別の考察は発表してきたものの、単龍・単鳳環頭大刀全体の系統整理や編年の再検討は未着手であった。この分析に、最終年度中に着手したいと考えている。 第二に、獅噛環頭大刀の悉皆調査に基づく総合的検討である。獅噛環頭大刀の資料調査は、2021年度までに実見可能な資料の7割ほどを実施できており、コロナの状況次第ではあるが、今年度で悉皆調査を完了できる見込みである。資料の実見を終えたら、速やかに検討結果の論文化に取り組みたい。 第三に、古墳時代中期以前の鉄製環頭大刀の検討である。これは2020年度末に公表した三葉環頭大刀の系譜整理研究の中で派生した研究テーマで、日本列島における初期の外来系大刀の位置付けを明らかにしようとする試みである。2021年度にも資料調査をある程度進めてきたが、2022年度も調査を継続しつつ、系譜的分析にあたりたい。
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