本研究は,高山帯源流域の雪氷融解に伴う水涵養・流出機構を明らかにすることを目的とし,森林限界を超える高山地域を対象に水文観測,水試料の採取,それらのトレーサー分析を実施した.高山帯における水流出・水涵養を支配する要因は,短期間の積算降水量と雪氷融解水の供給であることが示唆された.トレーサーを用いた成分分離法の適用により,夏季の雪氷後退に伴い,流出水を構成する成分が雪氷・降水成分から,地下水・土壌水成分に変化することが明らかとなった.さらに,植生部と裸地部の流出水の明確に異なる水質・同位体比から,土地被覆条件により水貯留機能が決定される可能性を示した.
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