これまでの調査によって、マルチセクターの協調には、ハブとなる人物が存在することによって情報伝播が効率化しているスケールフリー性をもつ社会ネットワークの構造を、地域の様々なセクターで有効利用できるかが重要な条件であることが判明している。特にハブとなりやすいのはサードセクターや複数セクター兼務のキーパーソンであり、サードセクター専業者や兼務者が地域間をつなぐ役割を果たしている。ただし、市場セクターや政治・行政セクターにも、ハブの役割を担うキーパーソンが存在し、単純にセクターのみでハブが存在することを説明できない。ハブとなる割合が最も多かったのは複数セクターを兼務するキーパーソンであった。 彼らは、それぞれのセクター特有のルールや規範を理解し、異文化を翻訳できる立ち位置にいる。このことから、マルチセクターが協調していく際の鍵のひとつは彼らの文化翻訳能力であることが示唆された。 本年度はこのような社会ネットワークの張り巡らせかたやハブとなる人物が輩出されていく機構を、具体地域を定め、歴史的に検討することを試みると同時に、その社会実装についていくつかの実りを得て、様々な機会に恵まれた。学術論文のみならず商業誌に執筆の機会を得て、複数の講演を実施した。また、2024年1月1日に発災した能登半島地震では、この知見が石川県の復興計画において重要な役割を果たし、ハブとなる人への投資を前面に押し出す復興計画の骨子が策定されている。
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