研究課題/領域番号 |
19K13479
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大石 侑香 神戸大学, 国際文化学研究科, 講師 (80790849)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ドメスティケーション / 毛皮 / キツネ / 北極域先住民 / グローバルヒストリー / 資源管理 / 畜産業 / ミンク |
研究実績の概要 |
2020年度は、計画では、ロシアと日本において毛皮産業に関する現地調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響をうけて中止した。代わりに、文献資料収集とその整理を行い、毛皮動物のドメスティケーションとその拡大過程について歴史的観点から研究した。 文献研究では、日本毛皮協会およびFur Europe、各国の農業政策等の毛皮産業関連資料を収集・精査し、アジア、欧州、北アメリカにおけるミンクやキツネの飼育の普及と拡大の過程、流通構造の変化について整理し、それらの北極域の先住民への影響を中心に考察した。結果として、狩猟が毛皮生産の主流から外れたために、シベリア、アラスカ、北米の狩猟民たちは、毛皮の生産・流通・消費の「世界システム」の枠組みから見れば、「再周辺化」したということを明らかにした。 この研究成果を、Arctic Science Summit Week 2021や国内ワークショップ等において口頭発表した。これらにおいて、ミンクやキツネのドメスティケーションによるタイガの食物循環への影響、ドメスティケーションによる先住民の動物観の変化、近代産業におけるドメスティケーションの倫理といった新たな着眼点と批判を得た。今後はこれらの批判を踏まえつつ研究課題を遂行していきたい。 また、本年度の研究成果を活かし、2020年に話題になったデンマークにおける飼育ミンクへの新型コロナウイルス変異種感染とその政府の対処に関して、電子版新聞にて解説を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は日本とロシアにおいて毛皮動物飼育技術に関する現地調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響をうけて中止した。そのため、進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、2020年度に行う予定であったロシアにおける現地調査を行う予定である。具体的には、かつて毛皮交易の中心地であったイルクーツクと現在の毛皮生産・加工の拠点であるノヴォシビルスクとモスクワの毛皮獣飼育場および加工工場において調査を行い、ロシアの毛皮産業史と技術史を明らかにする。 しかし、以上の海外調査は新型コロナウイルス感染拡大の影響により再び中止する可能性がある。その場合は、日本での現地調査を中心に行う。具体的には、かつてミンクやキツネ、ヌートリアの毛皮生産を行っていた北海道および新潟、タヌキ飼育の中心地であった北九州において現地調査を行い、日本の毛皮産業史と技術展開を明らかにする。 また、引き続き先行研究の収集・整理と国立民族学博物館の毛皮資料研究の分析を行い、論文執筆を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、予定していた国内外現地調査を中止したため、次年度使用額が生じた。この分は、次年度に現地調査を行って使用する予定である。
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