本研究は、憲法に明文の規定(25条1項)があるにもかかわらず、判例上その主観的権利性を認められているとは言い難い生存権について、それをいかに理解し、構成することによって、その存在が認められ、その実効的保障が可能になるかを明らかにしたものである。ドイツでは、憲法に明文の規定がないにもかかわらず、連邦憲法裁判所が「生存権」を承認した。その権利構造と司法審査のあり方は、日本の生存権理解にとっても、非常に参考になるはずである。日本の生存権に関する学説はさほど発展しているとは言えない。ドイツの生存権のあり方は、教科書記述レベルで日本の生存権の理解に変更を迫るものであり、裁判所にも採用されうるものである。
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