研究課題/領域番号 |
19K13561
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐野 智也 名古屋大学, 法学研究科, 特任講師 (30419428)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 法情報 / 情報基盤 / ロエスレル草案 / 民商法典 / 外国立法例 / 近代法制史 / 商法史 |
研究実績の概要 |
旧民法・明治民法に比較し、旧商法・明治商法については、立法資料が整備されておらず、編纂プロセスの詳細がほとんどといってよいほど知られていない。このような顕著な差をデジタル化によって一気に埋め、民法と商法を横断的に接続し、有機的に連携させて、種々の規定の成立プロセスの比較や解明をおこなうことが本研究の目的である。 旧商法に関して、本年度は、『ロエスレル氏起稿商法草案』の和文及び独文、商社法の元老院下付案および成案、『商法草案』など、主要な条文案のテキストデータを作成し、公開した。さらに、これらの条文案の変遷過程を検討し、「条文沿革データベース」に登録し公開した(https://law-platform.jp/acts/123032)。 明治商法に関しては、参照立法例として示されている外国法が、具体的にどの法律・条文を指しているかを特定し、テキストデータを作成した。これを「条文沿革データベース」に登録し、明治商法の条文案と対照して閲覧できるようにした(https://law-platform.jp/acts/132048d)。 また、明治民法と参照立法例の関係を網羅的に明らかにするために、類似度という指標を用いた分析を試みた。これまで、参照対象や参照回数を網羅的に明らかにしてきたが、さらに、内容的な同一性も考慮して検討しようとするものである。実験の結果、有効に機能する面があることが明らかになった。一方、異なる主義の考え方をとっていても、対応する条文を「参照」としている場合もあり、「参照」の意味のあいまい性が大きいことも明らかとなった。類似度は、数値的に示される客観的な指標であるため、明治民法と明治商法の関係を検討する際にも、このアプローチは有効であると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、旧商法起草の各段階の草案をテキストデータにすることを目指し、会社条例編纂委員会での草案は、全てテキストデータにすることができた。しかし、商法編纂委員会と法律取調委員会における商法草案と商法再調査案については、NDLデジタルコレクションの画像が不鮮明でテキストデータにすることが困難であることがわかり、保留した。 他方、次年度に予定していた明治商法における参照立法例の特定およびテキストデータ化を先行しておこない、大部分を終えることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
商法草案と商法再調査案について、テキストデータ化の方策を検討し、テキストデータを作成する。 前年度に先行して進めた参照立法例の特定およびテキストデータ化は、特定できていないものについて、引き続き調査を行う。 参照立法例の大部分のデータ化は終えているため、商法において外国法がどのように取り入れられたかについても、分析を始める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
旧商法に関して、本年度は、すべての条文案のテキストデータを作成することを目標としていた。しかし、商法編纂委員会と法律取調委員会における商法草案と商法再調査案について、NDLデジタルコレクションの画像が不鮮明でテキストデータにすることが困難であることがわかり、この役務を保留したため残額が生じた。データ作成方法を検討し、翌年度に同役務を執行することとする。
|