本研究では、明治民法と起草の際に参照した外国立法例の関係を明らかにするために、自然言語処理技術を用いて各国の立法例の類似度を可視化する研究を行ってきた。この研究の最終成果物として、「法律情報基盤」上にて、可視化した図をすべて公開した。(https://www.law.nagoya-u.ac.jp/jalii/refvis/index.html) 最終年度も引き続き「法律情報基盤」への資料追加を進めた。旧民法の理由書としてボアソナードが執筆した"Code civil de l'Empire du Japon. Accompagne d'un expose des motifs"があり、その和訳資料として『民法理由書』が存在する。この資料は手書き資料であるため読むことが困難であったが、テキストデータとして翻刻し、部分的に公開した。 商法は、民法と比べると、明治期の立法沿革に関する研究が十分にされておらず、立法資料も未解明の部分が多かった。これらの顕著な差をデジタル化によって一気に埋めることが、本研究の課題であった。研究期間全体を通じ、起草過程の各段階の条文案、法律取調委員会・法典調査会等の議事録、外国の参照立法例、起草者の立法理由書など、民法と商法で同等に資料をそろえることができた。また、民法と商法で相互に参照している場合に別の条文沿革をシームレスに閲覧できるようにするなど、研究開始当初のシステムから、ユーザーインターフェイスの見直しとシステムの改良を行ってきた。これにより、様々な資料を有機的に連携させて、種々の規定の成立プロセスの解明をおこなうための環境を整えた。
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