本研究の学術的意義は、債権者の事情を理由とする損害賠償額の減額について、その理論的根拠と全体構造を示した点にある。 根拠について、これまで過失相殺では「当事者の公平な損害分担」が根拠とされてきたのに対し、特に契約違反の場合においては、契約および経済的効率性という概念が根拠となることを示し、「公平」の中身を理論的に具体化した。 そして、損害賠償の減額方法には過失割合を認定して損害額を案分する方法(割合的減額)と、具体的な額を決める方法(部分的減額)があり、日本とアメリカの検討を通じ、部分的減額が割合的減額に優先するという「部分的減額優先の原則」があることを主張した。
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