研究実績の概要 |
前年度は、ドイツの約款規制規律に関する基本コンメンタールを中心として議論状況の整理に取り組んだが、同年8月29日に東北大学民法研究会で報告した成果を元に、本年度は論文として公表した(「約款規制の事業者間契約における意義 ―ドイツにおける議論の変遷と現状-」損害保険研究82巻3号35-60頁(2020年11月))。この検討過程で明らかになったこととして、①2010年以降、学説(Berger)および法曹実務(DJT, DAV)・経済実務(Initiative zur Reform des AGB-Rechts)において改正に向けた強力な動きがあり、具体的な改正案がいくつも示されたこと、②とりわけ、Leuschnerが連邦司法消費者保護省からの委託研究として詳細な報告書を公表していたこと(Leuschner2014、2021年7月には初の専門的コンメンタールも刊行(Leuschner, AGB-Recht im unternehmerischen Rechtsverkehr - Kommentar zu den §§ 305-310 BGB, Juli 2021))、③判例もいくつかあらわれていること(たとえば「Take-or-Pay」条項に関するBGH 22.11.2012, NJW 2013,856, vgl. Maier-Reimer NJW 2017,1)④しかしながら、現行法の解釈論の範囲で足りるとする根強い反対があり(von Westphalen, Basedow, Fuchs)、経済実務でも中小企業を中心に強い反対があること(pro AGB-Recht)、があげられる。 以上の内容の一部は、東北大学民法研究会において報告し、示唆を得た(論題「ドイツにおける約款規制の事業者間契約への展開:適用除外要件をめぐる議論を中心に」、11月12日、東北大学(zoom))。
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