本研究では、事業者間契約に対する約款規制の在り方について、ドイツ法を参照した検討を試みた。 その結果、ドイツでは2002年債権法改正までは約款規制が及ぶことへの賛成説が多かったが、2010年頃から批判説が増加し、解釈論の修正および法改正の動きが活発化してきたことが明らかになった。この成果については、損保総研・損害保険研究費助成「約款規制の事業者間契約への展開と「商慣習」の意義 」(2018年11月 -2019年10月)も得て、論文として公表(「約款規制の事業者間契約における意義 ―ドイツにおける議論の変遷と現状-」損害保険研究82巻3号35-60頁(2020年11月))、学会報告(日本保険学会令和3年度大会(2021年10月24日))も行った。 ただし、2021年に初の本格的コンメンタールが公表され調査に時間を要したことの他、2020年頃からの新型コロナウイルスの諸般の影響により、研究の進展は大幅に遅れている。また、既に関連する研究課題も採択されていることから(武田直大「事業者間契約における不当条項規制に関する近年のドイツ法の議論の比較法研究」基盤研究(C)・2021年~2024年)、今後はそれらも分析しつつ本研究としての成果をまとめ直し、2024年度中に論文として公表する予定である。 日本法については、法状況の整理として、改正民法の定型約款規定に関する法制審の議論の分析・論文をまとめ一部公表したが(「定形約款規定の意義と射程(中)――法制審議会民法(債権関係)部会における実務をめぐる応酬――」大阪経済法科大学経済学論集42巻2号67-82頁(2019年5月))、後半部分のとりまとめが滞っている。これについても、ドイツ法の研究成果公表ののちに整理し、論文として公表予定である。
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