研究課題/領域番号 |
19K13590
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
湯川 拓 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80728775)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クーデタ / 選挙監視 / テキスト分析 / プロテスト |
研究実績の概要 |
体制変動期において新体制がいかにして正統性を調達するかという点を理論的・実証的に明らかにするのが本プロジェクトの目的である。2020年度は4年計画の2年目に当たる。昨年度はデータセットの構築や収集したデータを分析にかけるための前処理などに多くの時間を割いたが、今年度からは具体的な分析に多く着手した。 まず、クーデタ研究においては抗議デモがクーデタを誘発するというメカニズムを理論的に精緻化し、それを計量分析によって実証する論文を執筆した。従来は抗議デモはクーデタを呼ぶということが指摘されていたものの、実際にはそれは冷戦後に限って見られる現象であり、その理由としては冷戦後にはクーデタを起こす側は自らの民主的正統性を国際社会にアピールせねばならないというものが挙げられる。この研究は既に投稿し、現在二度のRevise and Resubmitを経て審査中となっている。また、クーデタの含む形で体制変動一般をどのように正当化するかという点をフレーミングという観点から実証的に分析した論文を執筆し、これも査読中である。 他方、選挙監視については監視レポートに対するテキスト分析を行った論文を執筆し、これも現在Revise and Resubmitになっている。この研究は、不正をする政権の側が不正の仕方をより洗練させてきたのに対し、監視をする側がそれを受けて監視の仕方を進化させてきたのかをテキスト分析によって実証的に明らかにしたものである。また、同様にテキスト分析を用いて監視団ごとの監視の仕方の差異を明らかにする研究を現在は進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクセプトまではいっていないものの、多くの論文が査読中のステータスになっており、中にはRevise and Resubmitの状態のものも二本含まれる。その意味で、来年度以降具体的な成果となることが期待される。 他方、新型コロナウイルスの影響により予定していた資料収集やインタビューなどには支障が出ており、その意味で計画に比べ遅れも見られる。
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今後の研究の推進方策 |
選挙監視レポートのテキスト分析を中心的に進める予定である。この分野は本プロジェクトが初の試みになるため、データの公開による公共財の提供なども積極的に行っていきたい。 また、クーデタの研究は現在投稿中の複数の論文がアクセプトされればひと段落となるため、今度は独裁者の亡命についての研究に取り掛かる予定である。既にデータの構築には着手している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、出張の類の予定がことごとく無くなってしまったことによる。 状況が収まり次第、これらの活動を行う予定である。
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