研究課題/領域番号 |
19K13598
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
新川 匠郎 神戸大学, 国際文化学研究科, 講師 (60802486)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 連立交渉 / 質的比較分析(QCA) |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、西欧と中東欧諸国における大連立の各種成立パターンを検討することで議会制民主主義が抱える現在的な問題に光を当てることである。本年度は西欧における大連立に至るまでの政党間の連立交渉に関するデータの整理を行い、その分析を進めている。先行研究においては連立の各種成立パターンに比べて、その成立過程に関する理論的な考察が相対的に少なかった。そのため大連立の各種成立パターンの内実を明らかにする上でも、連立交渉の分析を試みることは有益なアプローチと考えられる。そこで本年度は先行研究における組閣過程に関する分析とその方法をまとめ、その特徴と問題について整理している。ここにおいて分析手続きとして、必要条件と十分条件という観点から複数のパターンを検討できるtwo-step QCAと呼ばれる方法の応用可能性について、質的比較分析(QCA)の方法論に関する議論と照らし合わせながら確認している。以上を踏まえた上でThe European Representative Democracy Data Archive (ERDDA)というスウェーデンの大学のデータアーカイブを活用しつつ、two-step QCAを用いた西欧における連立交渉過程の分析について行っている。この結果、政党の複合的な行動動機と諸制度の配列に基づいて組閣を困難にさせる複数の道筋について明らかにしている。具体的には、選挙後における議会多数派政党の不在を前提として、交渉する政党数および政党間の分極化のみならず連邦制・二院制の特徴、大統領の役割が組閣に影響することを確認している。ここで得られた組閣への道筋に関する理論的知見は、大連立の成立経緯の多様さを解き明かしていく上で重要なものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はドイツ・ベルリンを拠点とした在外研究を計画しており、その際に各種調査や専門家との意見交換も行う予定であった。しかし本年度は在外研究が不可能であったことから、オンラインでの情報収集のための設備等の拡充、その上でのオンライン上でのインタビューや意見交換、文献データ収集にとどまっている。この一つの結果として、2020年度に予定されていた中東欧のデータセット構築について進んでいない。そのため進捗状況は当初の予定よりもやや遅れていると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、当初の計画通りデータ分析のまとめに注力する。その際には西欧のみならない中東欧での組閣過程の分析が第一に課題となる。また、それを踏まえた上で西欧と中東欧における大連立の各種成立パターンについて検討することが求められる。ただし2021年度に予定された欧州における在外調査も現状では計画することが困難である。そのため分析の過程において不足している情報の補完、資料やデータの追加収集の方法について別途検討する必要がある。また計画書に記載されている国内外の学会参加や、研究者を招聘したワークショップのオーガナイズについても、オンラインを通じた代替的な手段を講じる必要があると認識している。
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次年度使用額が生じた理由 |
在外研究ができなかったことに伴い次年度使用額が生じている。2021年度に予定された欧州における在外調査も現状では計画することが困難であることから、翌年度分として請求した助成金と合わせて、オンラインでの情報を集めるための設備などの拡充、文献データの収集に用いることが予定される。
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