研究課題/領域番号 |
19K13628
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
八代 拓 山口大学, 経済学部, 准教授 (70824340)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本外交 / 経済外交 / 東南アジア / インドネシア / フィリピン / 米国 / 冷戦 |
研究実績の概要 |
研究代表者は過年度において日本とインドネシアの経済外交史に関わる研究を進め、単著『印の戦後と日本の経済進出』(晃洋書房、2020年)に取りまとめて刊行した。同書は、戦前戦後を貫く日本企業が日尼関係に与えた影響を浮き彫りにし、戦後日本の経済外交の実態を解明した類例のない成果である。
一方、その分析対象は、20世紀初頭から1950年代が中心であったので、今年度においては1960年代以降の日本=インドネシア経済外交史の解明を進めるとともに、国際比較分析に向けた日本=フィリピン経済外交史の解明に着手した。具体的には、外務省外交史料館および国立公文書館が保有する歴史史料、日本国内に存在するインドネシア関係史料の収集と分析を進めた。また、過年度において電子化済のマイクロ資料を分析し、米国の東南アジア外交政策の展開を分析した。
今年度の研究成果としては、下記が挙げられる。第一には、口頭報告「池田政権とカレル・ドールマン号事件――冷戦と経済の交錯」(日本国際政治学会2020年度研究大会、2020年10月24日)である。本報告では、発足直後の池田勇人政権がインドネシアとオランダの板挟みになりながら、国内経済界の要請を受ける形でインドネシア支持の姿勢を形成していった過程を解明した。第二には、論文「日比友好通商航海条約の史的研究――フィリピン上院勢力の変化に着目して」『山口経済学雑誌』69巻3・4号(2020年11月)である。同論文では、日比経済関係の基礎となった友好通商航海条約の批准をめぐるフィリピン上院の政治動向を分析し、日比二国間関係とフィリピン国内政治の連関を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、新型コロナの拡大に伴う海外渡航規制により、米国での国務省保有文書の収集については見送らざるを得なかった。このため、刊行済みの史料やインターネットで公開済みの史料、日本国内にあるマイクロ資料等に依拠する形となった。しかし、米国国立公文書館には、未刊行あるいはインターネットで非公開の史料が保管されているため、現地調査による一次史料の発掘が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
日本国内での歴史史料の収集を進めるとともに、新型コロナ終息後速やかに米国調査を実施する予定である。また、推進中の日尼関係、日比関係に加えて他の東南アジア諸国との経済外交史の解明に向けて研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究においては、外国公文書館が保有する歴史史料収集のための現地調査を予定していたが、新型コロナ拡大に伴う渡航規制により現地調査を実施できなかった。当該予算については、新型コロナが収束した場合には海外現地調査費用に充当し、新型コロナ収束の目途が立たない場合には歴史史料データベースの契約費用に充当する予定である。
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