研究課題/領域番号 |
19K13809
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中川 充 日本大学, 商学部, 准教授 (90638412)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グローバル・イノベーション / 組織内の連携 / 組織外との連携 / オープン・イノベーション / 連携のマネジメント |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、グローバル・イノベーションを促進する、効果的なマネジメントの在り方を解明することである。特に、多国籍企業における組織内外の「連携」に注目し、問題の解明に取り組んでいる。研究計画の2年目にあたる2020年度には、日本企業の海外子会社に対するヒアリング調査と、同じく海外子会社に対する質問票調査を実施する予定であった。しかしながら、新型コロナウィルスの流行・感染拡大により、当初に予定していた計画を抜本的に見直す必要に迫られた。そこで、理論的な検討を進めるのと並行して、オンラインに切り替えて実施した調査によって収集したデータや本研究課題について既に収集していたデータ、関連する過去の調査から得られたデータなども含めて再整理し、新たに分析を行うことにした。その結果、2020年度には、以下の研究成果を上げることができた。 (1)研究論文の発表:採択済みのものも含めて、3本の研究論文が公刊される予定である。 (2)学会での発表:海外子会社のマネジメントが、多国籍企業内外の連携や現地での知識創造に及ぼす影響について、日本経営学会の全国大会で発表する機会を得た。発表に際しては、有益なコメントを得ることができ、その一部は、上記の論文にも反映されている。 (3)継続的な意見交換:3点目については、直接的な研究成果ではないが、いくつかの協力企業と、継続的に意見交換や情報のやり取りを行う体制を構築することができた。これについては、オンライン上でのミーティングが以前よりも一般的なものとなり、諸々の調整が容易なったことにより、円滑に進んでいるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
世界的な新型コロナウィルスの流行・感染拡大が止まらず、海外調査や研究発表の計画を大幅に見直す必要が生じてしまった。特に、日本企業の海外子会社に対して予定していた調査活動は、現地への渡航が不可能であったため、まったく実施することができなかった。 しかしながら、本研究課題の問題意識のもと、これまでに入手しているデータを分析しなおすなど、研究遂行上の工夫をすることにより、研究論文3本(採択済みを含む)と学会発表1回の成果を得ることができた。 また、予定していた海外子会社に対するヒアリング調査の一部を、オンラインに切り替えて実施した。現地で現場を観察し、そのうえで調査するのとはまったく違い、インタビュイーの発言について真意や行間を読むことが困難ではあるが、海外渡航が叶わない現状においては、オンラインでのヒアリング調査も、ひとつの手段として検討・活用していく必要があると考えられる。 以上の状況を総合し、予定していた研究計画の再考が求められているものの、一定の研究成果は上げられていることから、進捗状況は「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
上記のとおり、現時点では、当初の計画に対して「やや遅れている」状態である。具体的には、一定の研究成果は上げられたものの、調査については、大きな変更が余儀なくされていた。新型コロナウィルスの感染拡大が落ち着き、海外渡航を伴う調査活動が再開できるまでには、まだしばらくの時間を要すると考えられるため、以下のような代替策を検討している。 (1)1つ目の代替策は、ヒアリング調査のオンライン化である。これまでは、実際に現地へ出張し、現場の観察などとあわせて調査を実施してきた。しかしながら、現在は海外渡航ができないため、ウェブ会議システムを活用し、オンライン上で実施するというものである。金銭的・時間的コストを削減できるという面もあるが、これまでに数回実施してみて、やはり現場の観察が伴わない状態では、インタビュイーの発言の意図を推測することが難しく、重要な情報を正確に読み取れない恐れがあると感じられた。その部分をどのように補うのかが今後の課題である。 (2)2つ目の代替策は、質問票調査の比重を高めることである。質問票調査自体は、当初の研究計画に含まれていたものであるが、ヒアリング調査が実施できない現状を考えると、その分の費用を用いて、追加で質問票調査を行うことが可能である。研究計画では、海外子会社を対象にした質問票調査を予定しているが、それに加えて、本国親会社を対象とする調査も実施するなど、研究デザイン上の工夫が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該期間については、新型コロナウィルスの流行・感染拡大により、当初計画していた調査全般に遅れや、再検討の必要が生じた。特に、調査と成果発表のための海外渡航がすべて中止になり、そのための予算について、大きく予定の変更が生じた。 また、ヒアリング調査に関する予定変更に伴い、続いて計画していた質問票調査についても、後ろ倒しすることとなってしまった。 2021年度には、当初予定していた通りには実施が困難であることを前提として、研究目的を達成するために、柔軟な計画の修正を行っていきたい。そのうえで、新たに計画した調査・分析を着実に進め、引き続き、研究成果として公表していくつもりである。
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