本研究の目的は,企業における持続的な社会の実現を支援するシステムとしての環境管理会計の役割を、実践論の議論をもとに検討することである。持続可能性は価値中心的な規範的概念であり、経営実践において経済・社会・環境の側面のトレードオフを解決するためにはどのような社会経済システムが機能するのかについて明らかにする必要がある。この背景のもとで本年度は昨年度に引き続き、持続的な社会の実現を目指す企業の会計実践の役割を観察・分析し、また学術論文での発表や学会での発表を行った。第一に持続可能なサプライチェーンの実現に向けた組織間マネジメントについての検討を行った。持続可能なサプライチェーンの実践研究の現状と課題について明らかにすることを目的に持続可能なサプライチェーンの日本における先行研究のレビューを行った。この成果について、学術雑誌にて発表・掲載を行った。 第二に、企業が公表している環境戦略,経営計画,統合 報告書、有価証券報告書、サステナビリティ報告書、環境パフォーマンス評価,公表された論文などの多面的な資料を用い、企業のESGパフォーマンスと財務パフォーマンスの関係についての分析・検討を進めた。持続可能な社会の実現に向けて、企業には環境面のみならず社会やガバナンスすなわちESG活動に取り組むことが求められている。企業がESG活動を通じて企業価値を生み出すためには、どのような要素が存在するのか、また経済・社会・環境の側面のトレードオフを達成するための要因は何かについて、探索的な分析、検討を行った。この成果についてはファイナンス分野での研究を進める郭チャリ氏と問題意識を共有し、国内学会での共同報告を行った。
|