2023年度には,介護福祉士429名から回答を得た定量的調査と,介護施設の管理者10名及び介護主任・リーダー12名へのインタビューに基づく定性的調査の結果を分析し公表した。分析結果からは,介護現場における越境的学習の有用性が明らかになったが,同時に以下の阻害要因も見出された。すなわち,①グループワークへの参加や発表が苦手である,②越境的学習の内容と現場の課題との乖離,③学習成果を現場に還元する際の抵抗,④越境的学習をするための人手が足りない,⑤中間層介護職員は越境的学習が困難,という越境的学習の阻害要因が見出された。 さらに,定性的調査の詳細な分析を行い,その成果を研究論文としてまとめ投稿した。分析からは,越境的学習が介護職員の視野と創造性を広げ,発信力を高め,伝達講習を通じて学びを深める効果があることが示さた。しかし,人員不足のため外部研修への参加が困難であり,新しい取り組みに対して抵抗を示す職員が存在する現状も明らかになった。介護職員は,越境的学習を通じて異なる視点から生じる違和感や葛藤を保持しつつ,専門性を高めるための経験学習が重要であると考えられる。
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