研究実績の概要 |
本研究は、大江(宮川)スミと家政学を切り口に、近代の日英間の女子留学生/女性教育者のトランスナショナルな移動そのものに着目すると同時に、それを可能とした各国の教育的・社会的状況を分析することで、19世紀後半から20世紀初頭の女子中等・高等教育の世界的な拡大の構造と特質を明らかにすることを狙う。 2023年度は第一に、『女性とジェンダーの歴史』11号に「堀内報告に寄せて―後続のイングランド女子教育史研究者より―」(pp.65-66)が掲載された。第38回イギリス女性史研究会で行ったコメント報告(2022年12月10日実施)に加筆修正を加え、研究代表者のこれまでのジェンダー平等やフェニミズムへの関心が研究テーマや研究視角の選択にいかに対応していたかを述べた。 第二に、2023年6月に刊行された『論点・ジェンダー史学』の中で、研究代表者は「中等教育」(pp. 64-65)の執筆を担当した。男子中等教育にも目配りをした上で、主に女子中等教育の展開について概説し、論点を整理した。 第三に、2023年8月末から9月上旬にかけてロンドンの複数の文書館(LMA, UCL IOE, BL)で史料調査を行った。史料調査の目的は、1890~1910年代までのロンドンにおける家政学/家庭科の実施の分析に必要な史料の所蔵状況と種類を把握することであった。 第四に、刊行予定の共著の一部として、大江スミのトランスナショナルな留学経験と家政学の導入に関する章の執筆に取り組んだ。大江スミが留学前・留学中・留学後のそれぞれの時期にどのように家政学教育に携わり、それを通じて近代国民国家を家政学を通じて形成する問題意識を抱き、自身の教育思想や教育実践を通じて実現しようとしたかを概観する。
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