研究課題/領域番号 |
19K14109
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
山本 桃子 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, アソシエイトフェロー (20779110)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多文化共生 / ミュージアム / 学習プログラム / 博物館教育 / Object-based learning / フィンランド / アイデンティティ / グローバル化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「子どもの異文化へのアクセス」に着目しミュージアムでの体験活動の分析から「Out of School(校外活動)」の意義を検証することである。そのため、オンラインで入手できる各館のプログラム情報のみならず、どのような意図で該当プログラムをデザインしたのか、実施にあたりどんな困難・手ごたえがあったのかという運用過程を含めてミュージアムの取り組みを立体的に描き出すことを主眼としている。 本来2020年度にフィンランドへフィールドワークに赴く予定であったが、新型コロナウイルスCOVID-19のパンデミックにより2021年度まで渡航実施が困難な状況が続いている。これまで現地調査について「パンデミック収束までの暫定的な停止」扱いとして資料収集や過去の調査データ分析を進めてきたが、2022年度が研究最終年度であることを踏まえ、国内のミュージアムへフィールドを変更することも視野に入れている。 今年度は国内の博物館・美術館がコロナ禍においてどのような学習プログラムを実施しているのか、「異文化理解」の観点から一部ミュージアムへフィールドワークを行った。また、過去にフィンランドへ渡航した際に収集したデータの再分析を進め、多文化共生を実現するためにどのような学芸員のマインドが働いているのか、という点を論文化した。さらに、モノを用いた異文化理解学習の可能性について、国内外の科学教育研究者・博物館学研究者と検討を重ね、学会発表や研究ノートへの投稿を行った。 これらの作業により、来年度の研究について引き続き海外調査の可能性を模索しつつ、国内調査へ切り替えることも交えて柔軟に進めることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は学芸員へのインタビュー調査および空間デザインのフィールドワークによる質的データ分析を根幹としている。そのため、2020年に引き続き今年度もフィンランドへの渡航の機会をうかがっていたが、パンデミックの影響が長引き、研究計画を大幅に変更することとなった。したがって、研究の進展は計画よりもかなり遅れている。 その中で、過去の調査データを再検討し、異文化理解に関するモノのはたらき、すなわちオブジェクト・ベースド・ラーニングとアイデンティティの関係について国内外の研究者と検討を重ねる機会が設けられたことは今後の研究フィールド選定のための布石となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の各国の新型コロナウイルスCOVID-19 の影響を踏まえ、今夏までにフィンランドへの海外調査可否を決定し、フィールドワークに向けたデータ収集と現地との調整を急ぐ。あるいは、世界情勢が引き続き緊迫し現地への渡航が秋以降も難しいようであれば、国内のミュージアムに対象を移し、子どもたちの異文化交流のプログラムの実証研究を実施する予定である。その場合には、モノを用いたミュージアムでの学習プログラムであるオブジェクト・ベースド・ラーニングを研究している国内外の研究者へ助言を請い、異文化理解プログラムの要素について広い視野で検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画にあったフィンランド現地への渡航と海外学会参加のための渡航費が執行できず、旅費に関する支出が大幅に変更された。また、渡航制限に伴いインタビュー調査先の選定に苦慮し、謝金や人件費の執行にも変更が生じた。当初は2-3年目に実行する予定であったインタビュー調査が後方にずれこみ、旅費および謝金が繰り越されている。これらの残額は今年度中に執行予定である。
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