最終年度である本年度は、前年度までの研究成果を単著の研究図書としてまとめることに重点を置いて研究を進めた。そして、640頁で構成される大著である、単著『学校運営と父母参加:対抗する≪公共性≫と学説の展開』(東京大学出版会)を公刊するという研究実績をあげた。 本書をまとめる作業においては、すでに博士論文として提出した論文を基礎に、そのほかの論稿を加え、また、より正確で豊富な理論的・文献的根拠を示すべく改めて幅広い文献にあたり加筆・校正をする作業を進めた。 4年間の研究期間全体を通じて実施した研究の成果について述べると、学校運営への父母参加についての戦後の学説をトータルに把握して類型化し、また、学校運営への父母参加という主題を日本の社会科学の思想的特徴と関連付けて理解するという研究を、初めて行い公刊したという非常に重要な研究成果を得ることができた。 もっとも、本科研費による研究は、理論的研究と実証的研究から成り立っているところ、2年目に生じたコロナ禍によって当初予定していたイギリスやドイツの国外の訪問調査や国内の訪問調査がほとんどできなかったため、実証性が弱く理論的な研究に傾斜したものとなった。そのため、思想・学説についての研究は進んだものの、制度についての実証性のある研究を進められなかった点に限界・課題が残っている。また同様の理由で、国際学会での発表の機会を得ることもできなかった。これらについては、引き続く科研費の取得によって継続していきたい。
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