研究課題/領域番号 |
19K14253
|
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
紙田 路子 岡山理科大学, 教育学部, 准教授 (00782997)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 子どもの主体化 / 市民性教育における対話 |
研究実績の概要 |
「子どもの価値調整能力を育成する小学校社会科授業の実践研究」をテーマとして,2年次は1年次に構築した授業のフレームワークをもとに,小学校第4学年の学習内容「地域の自然災害」を題材とした授業設計を行った。それを2020年度に行われた社会系教科教育学会で発表し,さらに社会系教科教育学研究に投稿した。この論文では特に「既存の社会秩序を維持することではなく,その秩序を成り立たせている境界線を常に引き直す」という「主体化」を目的として,防災教育を行う場合には,学校内,あるいは学級内の対話だけでなく,外部機関との対話が必要である点を示した点に意義がある。さらに,主体化を保障する市民性教育として,外側からは「目に見えない」内面の変容と,「目に見える」外部の変革の関係性を示したオットー・シャーマーのU理論のアプローチを社会科授業構成に取り入れた小学校第6学年単元「記憶の文化-竹島歴史博物館をつくろう」の設計し,その成果を日本社会科教育学会の社会科教育研究に投稿した。単元の目標は何か,どのような社会問題を取り上げ,具体的にどのようなゴールを設定するのか,そしてそのゴールに向かってどのように進むかは,子どもや子どもの置かれた社会情況や文脈によって異なる。しかし,「それまでとは異なる基盤の構築【プレゼンシング】」を目的とした対話を行うことで,現実の社会問題の解決に適う,新たな枠組みを構想することができること,そのような意味ある社会的実践を通してこそ,子どもの主体化を保障できることを示した。 これらの授業実践を2年次に行う予定であったが,コロナ流行のため実践はできなかった。3年次は2年次に設計したこれらの授業を,実践し,子どもの逐語記録や授業記録からその成果と課題を示し,価値調整能力の育成に有効な授業理論を示す予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年次に構築した授業理論に基づき,単元開発を行い授業実践を行う予定であったが,コロナ流行のため,学校教育現場での実践が難しく実現ができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
3年次は2年次に設計した授業小学校第4学年単元「水害から考える地域防災」と小学校第6学年単元「記憶の文化-竹島歴史博物館をつくろう」の実践を行い,子どもの逐語記録,及び,授業記録,および半構造かインタビューで得られた記録を質的分析にかけることにより,授業の成果と課題を明らかにするとともに,「子どもの価値調整能力を育成する・保障する」小学校社会科授業の在り方を示し,学会や学会誌等で広く公表する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度においては,海外への渡航が不可能となり,コロナ流行のため計画していたNCSS(National Council for Social Studies)の学会発表ができなかった。さらには国内の学会もすべてオンライン開催となり,現地に出張として赴く機会ががほとんどなかった。さらに小学校での授業実践も実践が困難となったため,そのために計画していた教材費や外部講師に係る費用がすべて未消化となった。使用額の差が生じたのは以上のような理由による。コロナ流行の状況にもよるが,本年度は小学校授業実践を行い,その成果について国内外の学会で発表しその是非を問うだけでなく,学会誌にも投稿し周知をはかるようにしたい
|