本研究は自閉スペクトラム障害の診断を受けている,もしくは疑いのある人を対象に認知機能改善療法とリカバリー支援プログラムの複合的支援が症状や認知機能などの臨床的リカバリーのみならず主観的リカバリーに与える効果を明らかにすることであった. この目的を達成するために,急性期病棟に入院し,症状が安定した後に,早期の治療を実施した.治療は約3-6ヶ月間の認知機能改善療法および疾患管理リカバリープログラム(IMR)の複合的治療とした.治療者は看護師,作業療法士で行われた.治療開始時,および終了時,そして3か月後のフォローアップ時に,認知機能,精神機能,社会機能,リカバリー,自己効力感に関する評価を行った. 研究補助期間中2020年8月以降,COVIT-19による医療機関の感染予防対策として,本研究の実施が長期に渡り中止しした経過があるが,全てのデータを回収し,統計学的処理を行った.その結果,以下の3点が明らかになった.1)全般的な社会機能の改善.2)主観的および客観的パーソナルリカバリー尺度の改善.3)不安や抑うつなどの気分障害の軽減. さらに,対象者の転帰として,退院後の継続的な外来治療の継続,職場や家庭への復帰に至るものが多かった.以上のことから,急性期病棟における早期の機能訓練および退院を見越したリカバリーと疾患マネジメント教育は,患者の疾患理解やリスクマネジメントの機会を提供し,早期より自身の症状と向き合い,退院後の安定した生活に結び付く有効的な支援の一つになり得る可能性を示唆した.
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