研究課題/領域番号 |
19K14466
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
綾部 直子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部, リサーチフェロー (50754769)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 睡眠・覚醒相後退障害 / 概日リズム睡眠-覚醒障害 / 認知行動療法 / クロノセラピー / 不登校 |
研究実績の概要 |
生体内の睡眠-覚醒リズム(体内時計)と、外部の明暗サイクルとの間にずれが生じることにより社会生活に支障が生じる「概日リズム睡眠-覚醒障害」がある。そのなかで慣習上あるいは社会的に許容される睡眠時間帯より通常2時間以上相対的に後退するものは「睡眠・覚醒相後退障害(Delayed Sleep-Wake Phase Disorder:DSWPD)」と定義され、学校や仕事の前夜に十分な睡眠時間を取るために必要な時刻に入眠することや、通常の登校時刻や出勤時刻に起床することに著しい困難が伴う。特に児童・思春期から若年成人に多く、本人の努力や気合いでは自らの遅れた睡眠リズムを改善させることが難しい。また、単に睡眠-覚醒リズムの問題としてだけではなく、不登校や慢性的な遅刻、学業不振の背景となりやすいことや、未成年の場合は保護者の多大な関与が必要とされるためにそれ自体が問題となることも多い。本研究では、DSWPDに対して、従来の時間生物学的治療に認知行動的技法を加えた睡眠・覚醒相後退障害に対する認知行動療法プログラムを構築し、その実行可能性を検討することを目的としている。今年度は、国内外で実践されているDSWPDに対する心理社会支援や、時間生物学的治療として有効性が示されているクロノセラピーや高照度光療法の要素を取り入れ、睡眠専門医らとともに外来でも実施可能なプログラムの検討を行った。プログラムは、概日リズム睡眠・覚醒障害に関する心理教育や睡眠衛生指導、従来から有効性が示されている睡眠スケジューリングの定式化、高照度光療法等を組み入れた内容とし、概日リズム睡眠-覚醒障害を有する成人患者に行ったところ、睡眠相の前進が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はプログラムの構成内容についてまとめることができた。しかしながら、当初計画していたDSWPD患者やその家族が抱える問題の実態調査が行えなかったこと、外来患者の減少に伴い実践例が限られてしまったため「やや遅れている」と判断した。来年度以降、未成年者を含む患者を対象としたプログラムのfeasibilityを確認する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本プログラムを適用するDSWPD患者を増やし、アウトカムを睡眠時間帯の前進の程度(就床、起床時刻の変化)、日中の眠気や気分、日中の活動量、客観指標としての行動計の評価、として単群での前後比較試験を実施する予定である。プログラムの実施しやすさ、理解のしやすさなどについても探索的にヒアリングしながら改訂を行い、プログラムの実行可能性について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
DSWPD患者に対する調査やプログラムの冊子制作に着手していないため、次年度使用額が生じた。次年度は、これらの実施に加えて、睡眠の客観指標を測定する活動量計の購入、データ収集および入力のための人件費・謝金、成果発表のための国内外旅費、資料作成に伴う印刷費、各種消耗品等に使用する予定である。
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