食物の呈する匂いへの反応も食物新奇恐怖の特徴を説明する上で重要であるが、嗅覚性新奇恐怖の研究例は少なく、未解明な点が多かった。本実験の結果は、味と匂いの複合刺激としての食物に対する新奇恐怖の生起メカニズムを解明するために重要な知見と言える。食物新奇恐怖は現代人の非健康的な食習慣と関連することから、その脳内メカニズムの解明によって、ヒトの食習慣改善のための介入法につながる生理学的・神経科学的基盤を提供できる。また、食物新奇恐怖を示す動物の行動傾向を解明することは、飲食物を報酬とする行動課題 (迷路課題やオペラント学習課題) のプロトコルの精緻化につながる可能性も考えられる。
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