量子系に対する測定結果は一般的に確率的に揺らぎ、これは古典力学には見られない量子に本質的な性質である。本研究はこの量子系に対する測定に伴う揺らぎの概念を精緻化・一般化したものである。つまり、事前・事後選択した量子系には本来的に複素数で表される揺らぎ(弱分散)が備わっており、事後選択しない場合はそれらの確率混合として通常の非負の分散が現れる。そしてそのような複素数の揺らぎは、実験的にも観測できたことから、現実的に利用可能な量であることが示された。本研究により、事前・事後選択が関係する量子パラドックスの解決に重要な知見を与え、また逆に弱分散の制御によって波動関数を成形する新たな手段が与えられる。
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