研究課題/領域番号 |
19K14630
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
秦 徳郎 東京工業大学, 理学院, 助教 (30825005)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 量子アンチドット / 整数量子ホール効果 / 分数量子ホール効果 |
研究実績の概要 |
本課題「二重量子アンチドットにおけるコヒーレント準粒子輸送」では、分数量子ホール系に、二重量子アンチドットを作製し、分数電荷準粒子を制御および観測することを目標にしている。 (1)量子アンチドットの作製・測定技術の開拓 (2)単一量子アンチドットにおける分数電荷の閉じ込めの実証 (3)二重量子アンチドット/量子ポイントコンタクト粒子数検出器の作製 (4)分数量子ホール状態におけるコヒーレント輸送の実証、の4段階で研究を進めていく計画となっている。最終研究段階では、量子アンチドットを用いた二量子ビット間の結合・反結合軌道を観測することで、分数電荷準粒子のコヒーレント輸送を実証する。
初年度となるR1年度は、その第一段階となる、量子アンチドットの作製手法と微小電流測定技術の開拓をした。具体的にはまず、設計寸法で直径300nmの円柱状の橋脚をもつエアブリッジゲート電極をAlGaAs/GaAsヘテロ構造上作製した。これを用いることで、局所的にゲート電圧を印加できる。つぎに、強磁場を印加して整数量子ホール状態を形成し、その特性について伝導度測定を用いて調べ、直径300nmの量子アンチドットが形成されていることを確認した。
ここで、通常の電圧測定これまでの量子アンチドット研究の多くでは、電位差測定によって輸送特性が調べられてきた。しかし、電圧測定は雑音pAオーダーの微小電流の測定には適さない。そこで、本実験では量子アンチドットをトンネルする電流を、コルビノ型電極を利用した直接測定した。その結果、数pAの微小電流のクーロン振動の観測に成功した。また、同一試料に対する電位差測定との比較から、コルビノ電極による電流測定によってより低雑音の測定が可能になることを示し、本手法の優位性を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題「二重量子アンチドットにおけるコヒーレント準粒子輸送」では、 (1)量子アンチドットの作製・測定技術の開拓 (2)単一量子アンチドットにおける分数電荷の閉じ込めの実証 (3)二重量子アンチドット/量子ポイントコンタクト粒子数検出器の作製 (4)分数量子ホール状態におけるコヒーレント輸送の実証、の4段階で研究を進めていく計画となっている。
初年度となるR1年度は、その第一段階となる、量子アンチドットの作製手法と微小電流測定技術の開拓をした。具体的にはまず、設計寸法で直径300nmの円柱状の橋脚をもつエアブリッジゲート電極をAlGaAs/GaAsヘテロ構造上作製した。これを用いることで、局所的にゲート電圧を印加できる。つぎに、強磁場を印加して整数量子ホール状態を形成し、その特性について伝導度測定を用いて調べ、直径300nmの量子アンチドットが形成されていることを確認した。測定では、量子アンチドットをトンネルする電流を、コルビノ構造および高抵抗試料用の電流電圧変換器によって直接検出した。そして、電流の磁場およびゲート電圧の依存性で、pAオーダーのクーロン振動が明瞭に観測された。磁場周期20 mTは、電子軌道の直径が約360 nmに相当し、橋脚の周りに空乏領域が形成されることを考えると妥当である。また、同一試料に対する電位差測定(市販の低雑音差動電圧アンプ)との比較から、コルビノ電極による電流測定によってより低雑音の測定が可能になることを示し、本手法の優位性を実証した。
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今後の研究の推進方策 |
R1年度の実績をもとに下記の二つの実験を進める。一つ目は、遮蔽ゲートを用いた電子間相互作用の変調実験である。量子アンチドットでの少数準粒子制御には、電子間相互作用の変調(遮蔽)が必要である。そこで、エアブリッジゲート電極に加えて、遮蔽ゲートを用いることでその実現を目指す。本年度は、そのような量子アンチドット素子の作製と評価を行う二つ目は、二重量子アンチドットの実験である。整数量子ホール系における二重量子アンチドットの作製と特性評価を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で3月の出張予定がすべてキャンセルされたため、旅費申請がなくなった。それに加えて、1月以降に海外からの購入予定の物品の納品が年度末に間に合わない可能性があったためキャンセルをした。本年度は、当該年度購入予定だった物品を購入する予定である。
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