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2019 年度 実施状況報告書

磁性絶縁体のマグノンの凝縮と熱輸送に対するマグノン間相互作用の影響の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K14664
研究機関東邦大学

研究代表者

荒川 直也  東邦大学, 理学部, 博士研究員 (20736326)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワードスピントロニクス / マグノン / 磁性絶縁体 / マグノン間相互作用
研究実績の概要

2019年度の主要な研究実績は以下の2つです。
(1)二種類の磁場をかけたフェリ磁性絶縁体の非平衡マグノンのケミカルポテンシャルの発現機構の解明:二種類の平行磁場(静的な磁場と時間の周期性をもつ磁場)をフェリ磁性絶縁体にかけた系のマグノンの非平衡状態を記述する理論を構築し、非平衡定常状態でマグノンのケミカルポテンシャルが有限になる機構を明らかにしました。その成果は、Journal of the Physical Society of Japanで出版し(J. Phys. Soc. Jpn. 88, 084704(2019))、Editor's Choiceに選んでいただきました。また、その成果を科学新聞で紹介していただきました。
(2)らせん磁性絶縁体のマグノンエネルギーやマグノンペアー凝縮に対するマグノン間相互作用の影響の解明:Heisenberg相互作用とDzyaloshinsky-守谷相互作用を持つタイプのらせん磁性絶縁体のマグノン間相互作用の主要項を導出し、マグノンのエネルギースペクトルやマグノンペアーの凝縮の安定性に対する影響を場の理論(Green関数を使う摂動論)で調べました。その結果、複数のHeisenberg相互作用を持つタイプのらせん磁性体の場合と異なり、マグノン間相互作用の主要項は(マグノン演算子の)四次の項になること、マグノン間相互作用の主要な影響はマグノンのエネルギースペクトルの傾きの変化になることを明らかにしました。また、マグノン間相互作用がマグノンペアーの振幅を有限にするが、マグノンペアーの凝縮は誘起しないことを指摘しました。それらの成果は、Physical Review Bで出版しました(Phys. Rev. B 101, 064411 (2020))。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まず、磁性絶縁体のマグノンの凝縮の安定性に対するマグノン間相互作用の影響の研究は、本研究課題の審査中の時の研究成果も合わせて、2019年度までの研究で遂行できました。また、当初の計画では想定していなかった、非平衡マグノンのケミカルポテンシャルの発現機構の研究について、学会発表での他の研究者の方との議論をきっかけとして研究を遂行し、(マグノンの凝縮を理解する上で重要になる)その機構を解明することができました。一方、当初予定していた、らせん磁性絶縁体における(マグノン演算子の)三次の項の影響に関する解析は、Heisenberg相互作用とDzyaloshinsky-守谷相互作用を持つタイプのらせん磁性絶縁体ではその三次の項の係数がゼロになることが実際に研究を行なって分かったため、行いませんでした。

今後の研究の推進方策

2020年度は、磁性絶縁体のマグノンの熱輸送に対するマグノン間相互作用の研究を推進します。具体的には、磁性絶縁体に温度勾配をかけた場合のマグノンの熱輸送について、線形応答理論と場の理論(Green関数を使う摂動論)を組み合わせた手法を使ってマグノン間相互作用の主要項を考慮した理論を構築し、その熱輸送の輸送係数に対するマグノン間相互作用の影響を調べます。

次年度使用額が生じた理由

参加予定であった研究会が(新型コロナウイルスのため)キャンセルになり、当初の予定が変更になったためです。
2020年度使用額は国内の研究会や国際会議での発表および参加のために使用します。2020年度が本研究課題の最終年度のため、2020年度以降の使用額はありません。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Effects of magnon-magnon interactions in a noncollinear magnet induced by combination of a symmetric and an antisymmetric exchange interaction2020

    • 著者名/発表者名
      Naoya Arakawa
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 101 ページ: 064411_1-10

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevB.101.064411

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mechanism for a Chemical Potential of Nonequilibrium Magnons in Parametric Parallel Pumping2019

    • 著者名/発表者名
      Naoya Arakawa
    • 雑誌名

      Journal of the Physical Society of Japan

      巻: 88 ページ: 084704_1-9

    • DOI

      https://doi.org/10.7566/JPSJ.88.084704

    • 査読あり
  • [学会発表] Dzyaloshinsky-守谷相互作用を持つらせん磁性体のマグノン間相互作用の影響2020

    • 著者名/発表者名
      荒川直也
    • 学会等名
      第75回年次大会(日本物理学会)
  • [学会発表] 2種類の磁場をかけたフェリ磁性体の非平衡定常状態と マグノンケミカルポテンシャル発現機構2019

    • 著者名/発表者名
      荒川直也
    • 学会等名
      第13回 東邦大学複合物性研究センターシンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] フェリ磁性絶縁体のパラレルパンピングにおける非平衡定常状態とマグノンケミカルポテンシャル2019

    • 著者名/発表者名
      荒川直也
    • 学会等名
      2019年秋季大会(日本物理学会)

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公開日: 2021-01-27  

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