研究課題
これまで海底に設置された海底圧力計は津波の観測に広く用いられてきたが,近年の研究により,それに加えて海底の地震動も計測可能であり,地震計として使えることが示されつつある.本課題は,これまで着目されてこなかったこの地震動成分を活用し,陸から遠く離れた東北沖の地震活動,特に2011年東北沖地震前後の地震活動の時間的・空間的な変化を詳細に明らかにし,東北沖地震を引き起こした東北日本沈み込み帯の地震発生場の状態を特徴付ける要素を詳細に明らかにすることが目的である.本年度は,ここまで開発してきた手法を活用して,過去に発生した津波を伴う地震の震源断層モデルを高い精度で推定した.さらに,推定された断層モデルに基づいて,それらの地震に至った発生プロセスや震源域周辺での応力状態を詳細に明らかにした.2016年11月に福島県沖で発生した地震については,防災科学技術研究所のS-netの圧力計が記録した津波データを使用して,従来よりも高い精度で震源過程を推定することに成功した.さらに,推定された震源断層を2011年東北沖地震による応力変化と比較し,この地震の震源周辺における応力状態および東北沖地震に伴う応力場の変化を詳細に明らかにした.さらに,昨年度に開発した震源直上の海底水圧計の記録から地震動・津波成分を分離する手法を応用し,2011年東北沖地震時の震源直上の水圧記録から従来以上に詳細な本震の震源過程の推定を試みた.その結果をもとに,東北沖地震時のプレート境界で解放された応力解放を高い精度で推定し,プレート境界浅部における応力解放と津波生成プロセスを明らかにした.ここまでの研究成果の大半は論文として公表してきたが,新型コロナウイルスの流行に関係して論文の査読プロセスに時間を要しているものもある.次年度は,これらの論文の内容をまとめ,投稿・発表をする予定である.
3: やや遅れている
ここまでの研究計画の集大成として,ここまで開発してきた手法を用いて沖合で発生した地震の詳細な破壊過程を明らかにし,それらの地震の発生過程や地震発生帯を特徴づける応力状態を明らかにしてきた.それらの解析結果は論文としてまとめ,公表してきた.一方で,いくつかの論文に関しては,昨今の新型コロナウイルスの流行により,査読プロセスに時間を要している.この状況を鑑み,本課題は当初の予定よりやや遅れていると判断し,補助事業期間を延長することとした.
最終年度に大半の研究・解析は終了したが,まだ論文として投稿・査読中のものがある.延長年度においては,この論文の受理を目指す.
新型コロナウイルスの流行によりオンライン開催となった学会があるため.また,今年度中に受理される予定としていた論文の投稿・査読に時間がかかっているため.
すべて 2021 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
Geophysical Research Letters
巻: 48 ページ: e2021GL095915
10.1029/2021GL095915
巻: 48 ページ: e2021GL094255
10.1029/2021GL094255
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 126 ページ: e2021JB022223
10.1029/2021JB022223
巻: 126 ページ: e2021JB022132
10.1029/2021JB022132
巻: 126 ページ: e2021JB022098
10.1029/2021JB022098
https://quaketm.bosai.go.jp/~kubota/publications/Kubota_etal_2021_GRL2/
https://quaketm.bosai.go.jp/~kubota/publications/Kubota_etal_2021_GRL1/
https://quaketm.bosai.go.jp/~kubota/publications/Kubota_etal_2021_JGR/