研究課題/領域番号 |
19K14949
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
加古川 篤 立命館大学, 理工学部, 講師 (50755486)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 並列弾性アクチュエータ / ダイレクトドライブモータ / 共振 / 板バネ / 周期運動 / 有限要素解析 |
研究実績の概要 |
2019年度では,板バネ式並列弾性アクチュエータを用いたヘビ型ロボットのエネルギー効率をシミュレーションと実機実験により検証した.まず,板バネの板厚,長さ,ヤング率などと関節剛性の関係をRBSM法(Rigid Body Spring Model)と呼ばれる離散モデルと数値計算によって求め,得られた関節剛性がアクチュエータのトルクに対して並列に加わるようなヘビ型ロボットの動力学モデルを構築した.この動力学モデルを用いて,関節トルクを最小化するような,板バネの剛性,ヘビ型ロボットの移動速度,振幅,位相差などをシミュレーションにより明らかにした.最後に,サーボモータとリボン鋼の板バネを用いたヘビ型ロボットを開発し,電流計測実験によってエネルギー消費のシミュレーション結果との比較を行った. これらの結果をまとめ,IEEE/ASME Int. Conf. Advanced Intelligent Mechatronics (AIM 2019)にて発表を行った.また,並列弾性アクチュエータを用いたヘビ型ロボットの低速運動時におけるエネルギー消費抑制方法についてもヘビの体の形態を変える方法を提案し,システム制御情報学会論文誌で発表した. その他,RBSM法から得られる板バネの剛性の理論値を確認するための計測装置を製作し,実測により検証した.その結果,板バネの公称ヤング率には大小15%ほどのばらつきがあり,ロボットに搭載する場合には,予め剛性の真値を調べた方がよりエネルギー消費を抑制できることがわかった.また,各関節の消費電流値とトルク定数から横軸を関節角度,縦軸を関節トルクとしてグラフ化すると,上下に膨らんだような結果が得られた.これは動力学モデルに粘性を加えたときの結果と一致するため,バネの剛性だけでなく粘性の影響も減らさなければ大幅にエネルギー消費を抑制することが困難であると判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
板バネ式並列弾性アクチュエータがヘビ型ロボットのエネルギー消費に与える影響を理論的に明らかにすることができ,実機実験によってもそれを証明することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
粘性の考慮:ヘビ型ロボットの各関節の消費電流を独立して計測した結果,粘性の影響を無視できないためバネの剛性だけで大幅にエネルギー消費を抑制することが困難であることがわかった.この粘性にはモータの逆起電力やロボットを構成する部品の機械的粘性などが挙げられるが,これらの影響を定量的に評価するとともに,粘性そのものを減らす構造や仕組みを考案する必要がある.特に,モータのコイルの巻数や大きさ,減速機の種類や減速比などの組み合わせに選択の余地があるので,これらの要素を頼りにロボットの構成について研究する. 新たな制御方法の提案:現在のヘビ型ロボットの各関節角度はPID制御によって制御されている.そのため,関節角度に目標となる正弦波を与えている途中,関節角度が収束する度に余計な保持トルクが発生し,それがエネルギー消費増大の原因になっていた.そこで目標関節角度に正弦波ではなく,単純な矩形波を用いて関節角度に余計な保持トルクを発生させない手法について研究する. 板バネ材料の塑性変形領域の考慮:一般的な材料には弾性領域と塑性領域があるため,板バネ式並列弾性アクチュエータの可動範囲を弾性領域の範囲内に留めなければ,共振を利用した高効率な運動を実現できない.そこで塑性領域も考慮したロボットの設計方法について研究する.
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