研究課題/領域番号 |
19K15127
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
丁 青 中央大学, 理工学部, 助教 (70837476)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膜ファウリング / メソ粒子 / ゼータ電位 / バイオポリマー |
研究実績の概要 |
浄水処理で多用される凝集技術では、凝集後に残存する微小な粒子の制御が課題となっている。凝集後に残存する膜細孔付近の微小コロイド粒子(20 ~ 500 nm;メソ粒子と定義)が膜目詰まりに寄与するほか、砂ろ過から溶出する可能性もある。メソ粒子が荷電中和される凝集条件の場合には最も後段の膜ろ過への影響が軽減されることが解っている。しかし、我が国で一般的な市販凝集剤ポリ塩化アルミニウム(塩基度50%程度のPACl)は、メソ粒子を酸性pH側(pH < 5.5)で荷電中和できるが、中性pHにおいてはどれだけ凝集剤を注入しても荷電中和できないことが明らかになっている。このことから、メソ粒子の荷電中和には既存の凝集理論で説明できないメカニズムがあると考える。そこで、本研究では、凝集後に残存するメソ粒子を分画し、その構成成分を調べると共に、分画したメソ粒子の物理化学的特性、凝集剤特性がメソ粒子の物理化学的特性に与える影響について検討する。 市販の凝集剤で天然河川表流水を用いて凝集実験を行った。凝集後に残存するメソ粒子について、ゼータ電位と構成成分に着目し、様々な凝集条件下で生成するメソ粒子の起源を推定した。表流水の凝集後に残存するメソ粒子のゼータ電位を調べた結果、ほとんどの凝集条件下でメソ粒子のゼータ電位は負電荷であり、荷電中和が困難であることが明らかとなった。しかし、同程度の負電荷のゼータ電位を示しても、凝集後に残存するメソ粒子の主成分は凝集条件によって全く異なることが明らかになった。原水中に含まれる高分子バイオポリマー(BP)濃度に対して、凝集剤が過少添加の場合はBPがメソ粒子の主成分として残存する一方、凝集剤が過剰添加の場合は凝集剤を起源とするAlコロイドがその主成分として残存することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画において、異なる河川水を対象として様々な条件で凝集実験を行い、メソ粒子の分画・回収ができた。また、メソ粒子画分の有機/無機比の測定も成功している。以上のことから、概ね順調に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、天然河川水中の「メソ粒子画分」を分離し、ジャーテスト実験を行うことで原水中のメソ粒子画分が凝集後に残存するメソ粒子の物理化学特性に及ぼす影響を検討する予定である。また、凝集剤由来の「メソ粒子画分」を分離し、凝集剤の特性が凝集後に残存するメソ粒子の物理化学特性に及ぼす影響を検討する予定である。また、これまでに得られた知見についてまとめて、学術誌にも発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた試薬やメソ粒子を分離用の消耗品の購入費が少なく済んだ。また、英語論文についての校正費は今年度末までに投稿準備が完了しなかったため,計上しなかった。 必要な消耗品(試薬・ガラス器具)の購入に支出予定である。また、現在準備中の英語論文の英文校正費に支出予定である。
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