浄水処理で多用される凝集処理では、凝集後に残存する微小コロイド粒子(20 ~ 500 nm;メソ粒子と定義)の制御が課題となっている。メソ粒子が荷電中和される凝集条件の場合には最も後段の膜ろ過への影響が軽減されることが解っている。しかし、我が国で一般的な市販凝集剤ポリ塩化アルミニウムPAClは、メソ粒子を酸性pHで荷電中和できるが、中性pHにおいてはどれだけ凝集剤を注入しても荷電中和できない。そこで、本研究では、凝集後に残存するメソ粒子を分画し、その構成成分を調べると共に、凝集剤特性がメソ粒子の物理化学的特性に与える影響について検討した。 市販PAClで天然河川表流水の凝集後に残存するメソ粒子の構成成分を調べた結果、原水中に含まれる高分子バイオポリマー(BP)濃度に対して、凝集剤が過少添加の場合はBPがメソ粒子の主成分として残存する一方、凝集剤が過剰添加の場合は凝集剤を起源とするAlコロイドがその主成分として残存することが明らかになった。 3種類塩基度の異なるPACl(塩基度 50%、54.5%、70%)由来のメソ粒子の物理化学的特性を検討した結果、pH6ではメソ粒子は正電荷を示した一方、pH7ではPAClは負電荷のメソ粒子を生成することが分かった。そのため、負電荷のメソ粒子を生成する凝集剤を使用した場合は、pH7においてメソ粒子の荷電中和が困難となることが示唆された。 pH-stat滴定により各凝集剤の化学量論(OH/Al)を算出し、各凝集剤由来のメソ粒子のゼータ電位との関係を検討した。pH6ではメソ粒子のゼータ電位と化学量論間に高い相関関係があった(r2=0.97)一方、pH7ではそれらの相関は著しく低下した(r2=0.18)。PAClが生成するメソ粒子のゼータ電位に、化学量論・塩基度が与える影響は極小であり、各凝集剤のゲル化特性等がメソ粒子のゼータ電位に影響すると考えられる。
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