研究課題/領域番号 |
19K15172
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
友渕 貴之 宮城大学, 事業構想学群(部), 助教 (10803596)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人を繋ぎとめる場所 / 条件不利地域 / 震災 / 場所 / 土地 / 集落 / 生業 / 復興 |
研究実績の概要 |
本研究では、東日本大震災における被災地を対象に人と場所との関係性から『人を繋ぎとめることに作用する要素』を探ることを目的としている。 初年度となる2019年度は『人を繋ぎとめる場所の特性』を俯瞰的に把握するため、東日本大震災による被災地域及び条件不利地域における人々を繋ぎとめるための仕組みと実態について俯瞰的に調査を行うことを中心に研究を進めた。 東日本大震災の被災地においては、沿岸部を縦断し、復興の進捗状況と住宅復興の現状を視察調査した。条件不利地域における人々を繋ぎとめる場所づくりの1つとして、地域住民自らが経営するサロン付き商店の事例について調査を行い、その特性について研究報告を行った。 対象地域である気仙沼市大沢地区においては、基礎調査として震災前後の暮らしの変化を明らかにすることを目的に研究を進めた。本年度は、震災前後の住宅の間取りや設えで残した要素と無くした要素を確認し、暮らしがどのように変化したかをヒアリング調査によって明らかにした。同時に震災前後では、住宅間の距離が大きく変化したことを踏まえて、近隣との関係性や外部空間における過ごし方についての現地調査も実施した。2つの研究内容についても研究論文としてまとめ発表することが出来た。 その他、学会等を通じて、場に関する意見交換の実施、条件不利地域における生活調査を実施することで、経済合理性とは異なる論理で土地に根付き、場所と密接に関わる暮らしの事例を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災における被災地を対象に人を繋ぎとめる場所の特性を把握することを目的に沿岸部広域の視察調査を実施し、概要を掴むことは出来た。しかし、地区内再建率を個別に把握することが難しく、地区内再建率をデータ化することが出来なかったのが課題であり、現在適切なデータの収集方法を検討している。 また、対象地区の被災前後の暮らしの変化に関する基本的な調査は実施することができたことは成果として大きく、2020年度には地区に戻ってきた要素について、場所との関係性から調査を実施する予定である。 その他、当初予定以上に参考となる条件不利地域における調査を実施する機会に恵まれ、人を繋ぎとめる1つの事例である地域運営型のサロン付き商店について研究論文としてまとめることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、土地と結びつく記憶や行為を整理し、地区内再建を決定することに寄与した要素についてヒアリング調査する予定であった。しかし、新型コロナウィルスの影響により、高齢者が多い大沢地区でのヒアリング調査は現状では難しい状態である。そのため、状況が落ち着くまでは、既に収集できている土地と結びつく記憶や行為についてのデータ整理を行い、調査方法の精査に努めることで、よりよいデータ収集が可能となるように研究活動を進める予定である。 その他、今年度は生活様式が大きく変化することが予想されるため、情報収集に努め、研究方針について検討を重ねていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、俯瞰調査を実施することを目的にデータ分析を中心に行う予定であったが、より適切なデータが2021年に販売予定であると助言を頂いたため、データの購入を延期したことが大きな要因である。それにかえて、被災地を直接視察するとともに、現在入手可能なデータを用いて概要を把握することに努めた。また、別事業でも被災地調査を実施することが出来たため、旅費が予定より少なくなった。俯瞰的に条件不利地域の人を繋ぎとめるための試みについても把握し、論文としてまとめることが出来た。 2020年度は大沢地区における新型コロナウィルス感染症の状況を把握しながら、地区内再建に繋げる要因となった場所との関係性についての調査・分析を行う予定である。また状況によっては文献・データ分析が中心となる可能性もあるため、物品費及び人件費に次年度使用額をあわせて使用する。
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