本研究課題では、電源を必要としない静的炉心冷却系である非常用復水器(IC)の配管に水素が流入した場合の影響を評価することを目的として、ICの模擬実験装置を用いた評価を実施した。ここでは、水素流入の影響を模擬するためにヘリウムを用いた。 前年度までに、ヘリウム非注入条件における安定した実験データの取得とヘリウム注入のための実験装置の整備を行い、意図した条件でヘリウム注入実験を実施できることを確認した。IC配管に注入したヘリウムは、蒸気の流れに乗って伝熱管を通過した後に下降管に滞留する。本年度は、過渡的な挙動を含めてヘリウム注入によるICへの影響を評価した。また、ヘリウムが滞留する下降管の配管径を変えた実験を実施し管径の影響についても考察を行った。 ヘリウム注入開始直後に下降管差圧の低下、流量低下、体系の圧力上昇がほぼ同時に見られた。これはヘリウムが下降管水面から伝熱管の間に滞留し、蒸気の伝熱面積が減少したことで流量低下と圧力上昇につながったと考えられる。ヘリウム注入を停止し、時間が経過すると体系の圧力上昇により気相部が圧縮され、十分な蒸気の伝熱面積が確保されると入熱量と除熱量が釣り合う準定常状態に達した。 下降管の配管径を10.7mmから19.3mmに拡大した条件では、同一のヘリウム注入量では流量低下や圧力上昇の影響は小さくなったものの、伝熱管の凝縮完了位置から下降管水面位置までの長さで整理すると配管径の影響はほとんど見られなかった。IC配管に流入したヘリウムは炉心へ戻ることは難しく、下降管水面上に滞留し、蒸気の伝熱面積の阻害を通じてICの冷却性能や長期的な定常条件に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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