研究実績の概要 |
本科研費研究では, 申請者が開発した水の光還元反応(水素発生)において極めて高効率な触媒活性を示すロジウム二核錯体の更なる高効率化を目指し, ロジウム二核錯体の水素発生反応機構における律速段階の1つである「Rh-H中間体形成後のHeterolytic経路」を, より低エネルギーで水素発生が可能な「Homolytic経路」を経由する様に, ロジウム四核錯体の分子構造を構築する。具体的には, (i) アーチ状有機ジカルボン酸配位子を使用する事で, 錯体分子内に「遷移状態・反応中間体を制御する事が可能なHomolytic経路に適した水素発生反応場」を持つ「空間活用型ロジウム四核錯体」を開発する。また, (ii) (i)において水素発生に最適な反応空間体積が形成可能なアーチ状有機ジカルボン酸配位子と(iii)最適なレドックス活性補助配位子の探索を行う。本研究では, 上記(i)-(iii)を実験のみならず専門的な量子化学計算の技術を用いて系統的に研究を行なう事で,ロジウム四核錯体の反応機構を詳細に明らかにする。最終的には, 更に高効率な水素発生触媒を創成する為の分子設計指針を確立することを目指している。 本年度の研究では、昨年度に開発したアーチ型ジカルボン酸有機配位子とトリフルオロ酢酸など様々な補助カルボン酸配位子を有するロジウム二核錯体を反応させることで、還元電位の異なるロジウム四核錯体の開発を数種類試みた。得られたロジウム四核錯体の光水素発生の評価は、様々なイリジウム系光増感剤を使用して現在実施中である。 また、同様のアーチ型カルボン酸と銅(II)イオンを反応させた銅四核錯体を合成し、その錯体のX線構造解析を行うことでロジウム四核錯体の分子構造の考察を試みた。構造解析の結果、2つのロジウム二核骨格の間には、水分子1個分に相当する配位空間が形成されていることが確認できた。
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