研究実績の概要 |
バイオマス系廃棄物の大部分を占めるセルロースを、改質プロセスを介さずに直接燃料として用いることは、エネルギーを有効利用するうえで望ましい。しかし、セルロースはほとんどの溶媒に不溶であり、液相での反応の知見が乏しく、そのため無機材料ベースの不均一系触媒から成るエネルギー変換デバイスはほとんど報告されていない。本研究課題では、液相中セルロースを(光)電気化学的に直接酸化分解可能な(光)電極触媒を開発するとともに、バイオマス(光)燃料電池の構築を目指した。 白金回転ディスク電極を用いた対流ボルタンメトリーによって、強塩基水溶液中に溶解したセルロースの酸化反応の電位依存性を明らかにした。加えて、各種金属電極触媒のセルロース酸化反応に対する活性を評価すべく、白金、金、パラジウム、ニッケルディスク電極の、セルロース水溶液中での電気化学特性を評価した。これらの電極触媒を用い、実際にセルロースのエネルギーを電気エネルギーへと変換可能な、燃料電池系の雛形を構築した。 他方、TiO2光電極を用いることで、固相のセルロース薄膜または強塩基水溶液中に溶解したセルロースを、光電気化学的に酸化分解可能であることも見出した。この時、TiO2光電極をセルロース酸化の触媒として用いることで、前述の光を用いない系に比べて燃料電池系の発電特性を大幅に向上可能であることも見出した。 これらの成果はすでに国内・国際学会において報告している。固相のセルロース薄膜を反応物として用いた光電気化学系に関する検討結果については、国際学術誌にて発表済みである(ChemCatChem, 2021, 13, 1530-1537)。また、対流ボルタンメトリー等を用いた電気化学的なセルロース酸化反応の精密解析に関しては国際学術誌に投稿中、液相中セルロースの光電気化学的酸化反応に関しては英語原著論文投稿準備中である。
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