研究実績の概要 |
本研究では、創薬や基礎研究に必要不可欠な生体高分子である、Immunoglobulin G (IgG)抗体やそのFc領域を合成標的としている。これまでに、鶏卵から単離可能なヒト型の二分枝複合型糖鎖を有するFc領域を化学合成している。最終年度である本年度は、下記のような研究を実施した。
単糖であるN-アセチルグルコサミンを有するFc糖ペプチドの合成をおこなった。重鎖同士の二量化に重要なヒンジ領域を含んだ219アミノ酸の糖ペプチドを合成した。4つのセグメント(N末端側からA,B,C,D)に分割し、糖ペプチドであるセグメントCはBoc固相合成法により調製した。この際、Boc-Asn(GlcNAc)-OHを別途化学合成し、ビルディングブロックとして固相合成に用いた。また糖鎖を持たないセグメントA,Bも同様にBoc固相合成によって得た。C末端側の124アミノ酸からなるポリペプチド(セグメントD)は大腸菌発現により得た。 得られたペプチド、糖ペプチドを原料としてペプチド連結反応を行った。緩衝液中、ペプチドチオエステルとN末端のシステイン残基を利用することで、Native Chemical Ligation (NCL) 反応によって天然のアミド結合でペプチド同士を連結した。3回のNCLを順次実施することで219アミノ酸からなる全長糖ペプチドを合成した。 本研究結果により、アミノ酸配列に変異を加えることなく、さらに大腸菌発現を利用することで簡便にFc全長が合成できるようになった。今後、Fab領域を含めた重鎖全長の合成や、キメラ抗体の創生、さらに抗体のフォールディング研究を推し進めることができると期待できる。
|