抗体は創薬だけでなく基礎研究に幅広く用いられる重要な生体高分子である。現状、抗体のような大きな糖タンパク質は哺乳動物細胞などを用いた発現法によって調製するのが一般的であり、低分子化合物のように有機化学によって自在に構造変化や部位特異的な修飾を行うことが難しい。抗体の構造の中で、Fc領域は生理活性に重要なアスパラギン結合型糖鎖が付加しており、また抗体の高次構造形成に重要な領域である。このFcを有機化学的に自在に合成することができれば、種々のFab領域とのキメラ抗体の創生や、位置特異的に化学官能基修飾を施した抗体の応用研究へと発展させることができる。
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