本研究では植物の細胞における記憶機構を担うとされているクロマチン構造の変化に着目し、リンゴの芽の休眠制御に関わる脂質の分子種およびその代謝に関わる遺伝子を特定することを目指した。休眠誘導期においてリンゴの腋葉芽では、低温やアブシシン酸を受容することで冬を認識し、1) クロマチン構造の変化により脂質代謝関連遺伝子のプロモーターにおいてMADS-box結合配列が表出することで、2) MADS-boxタンパクが表出した結合配列に結合し、3) その結果、ジャスモン酸を含む脂質代謝が変動することで、脂質蓄積を介した冬の長さの記憶と細胞分裂の低下が生じるといった細胞レベルでのモデルが提案できた。
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